アメリカ合衆国メリット制保護委員会 2009 MSPB 63 ---------------------------------------- 事件整理番号 CB-1216-06-0006-B-1 ---------------------------------------- 特別顧問, 申立人, 対 ロバート ウイルキンソン, 被告人。 2009年4月23日 ---------------------------------------- エリカ S.ハムリック様,ワシントン D.C.,申立人代理 J.ウォード モロー 様,ワシントン D.C.,被告人代理 次の者の面前での審理 ニール A.G.マックフィー,委員長 メアリー M.ローズ,副委員長 裁定理由及び命令 ¶1 当事者達は、申立人が2007年7月30日に及び被告が2007年7月31日に署名し た行政法審判官との共同和解協定書を提出した。行政法審判官(ALJ)は、該委 員会が当事者達の共同和解協定書を承認し、かつ、被告に30日間の無給の停 職を課するよう勧告した。以下に述べる理由により、我々は本裁定理由及び命 令により修正するところの行政法審判官の勧告を採用し、かつ、その共同和解 協定書を承認する。被告を30日間の無給の停職処分とするよう被告の採用機 関に命ずる。 背 景 ¶2 特別顧問局は、環境保護庁の従業員である被告が勤務中に政府の建物内で 政治活動に従事し、彼の公務から免れることに没頭することにより合衆国法典 5USC§7324(a)(1),(2)及び連邦規則集5CFR§734.306(a)(1),(3)に違反したと 告発する懲戒処分に対する告訴状を提出した。懲戒処分に対する最初の告訴状 ファイル(ICF)を表1に示す。申立人は、被告が彼の勤務中に大体30人の環 境保護庁の従業員に一人の大統領候補者を推奨する手紙を含む電子メール通信 を送信したと述べた。同告訴状において。2006年3月3日の裁決で、行政法審判 官は被告の略式判決を求める提案を承認し、申立人の懲戒処分請求を拒絶した。 ICFファイル表14。その後、特別顧問局は、行政法審判官のOSCの懲戒処分 請求を拒絶する最終勧告を含め彼の調査結果に誤りがあると主張する、かの裁 決の再審査申立て書を提出した。再審査申立て告訴状ファイル(PCF)は表1。 裁定理由及び命令書で、委員会は再審査申立てを認め、行政法審判官の勧告案 を取り消し、被告が告発されたところのハッチ法に違反したと認定し、かつ、 訴訟を行政法審判官に差し戻し、当事者達に本件の核心である適正な処罰に関 する証拠と論拠を提出させることにした。特別顧問対ウイルキンソン(被告) ,104 M.S.P.R. 253(2006);PCF,表8。 ¶3 委員会の裁定理由及び命令の後で、当事者達は当該案件の和解に達し、委員 会が共同和解協定書を承認するよう要請した。当事者達は、被告のハッチ法違 反に対し30日間の停職処分が正当であることを要求し、委員会がこれを認定 するよう要請した。差し戻し告訴状ファイル(RCF),表5-6. ¶4 差し戻し後の2007年8月8日の勧告案において、行政法審判官は委員会が当 事者達の共同和解協定書を許可し、被告に30日間の停職処分を課するよう勧 告した。被告の上訴ファイル(RAF),表7。行政法審判官はその行政処分勧告に 関し、被告は委員会がハッチ法訴訟において処分を決定するのに関連するもの と認定している6つの要因に真剣に取り組んだことに言及し、また、行政法審 判官はこれらの要因は免職と言う推定処分を30日間の停職と言う最小限度の 法定処分までに軽減する理由になると結論付けた。同上訴ファイルにおいて表 7−8。 分 析 ¶5 委員会は合衆国法典5USC§1215(a)及び1216(a)(1)に基づき本件における司 法権を有する。合衆国法典5USC§7324(a)(1)及び(2)並びに連邦規則集5CFR§ 734.306(a)に基づき、連邦政府の職員は勤務中に政府機関の構内で政治活動に 従事してはならない。その違反があったからと言って免職にするのは正当では ないと満場一致の採決で判定されない限り、委員会は7324項に違反したと認定 された職員の免職を命じなければならない。合衆国法典5USC§7326;罰則を参 照。この場合、委員会は”少なくとも30日間”の”無給の停職”を命じなけ ればならない。前記法典(罰則)による。ハッチ法に違反したと認定されてい る被告は免職と言う推定処分が課されるべきでないことを明らかにする証拠を 提出する重い責任を有する。特別顧問対ブリッグス(被告),110 M.S.P.R. 1,¶12(2008)。 ¶6 以下に述べる理由により、我々は本裁定理由及び命令により修正するとこ ろの行政法審判官の勧告を採用し、かつ、その共同和解協定書を承認する。そ してそれは環境保護庁が被告を30日間の無給の停職にするよう要求している。 ¶7 案件は和解済みとして却下する前に、委員会は当事者達が進んで和解協定を 結んだか、その約定を理解しているか、及び委員会による執行を目的にその協 定を公判録に掲載させる積りかどうか判定を下さなければならない。ブルース 対社会保障局,108 M.S.P.R. 339,340(2008)。我々は当事者達が和解協定を事 実上進んで結び、彼等がその約定を理解し、かつ、彼等が委員会の約定の執行 を望んでいるものとここに認定する。差し戻し告訴状ファイル(RCF),表6参照。 ¶8 それに加えて、執行を目的に和解協定を公判録に取り込む前に、委員会は その協定は文面上合法かどうか、当事者達は進んで協定を結んだかどうか、か つ、上訴の主題は委員会の司法権の範囲内かどうかを決定しなければならない。 それは即ち、法律、ルール若しくは規則が委員会に係る案件に判決を下す権限 を授与しているかどうか委員会は決定しなければならない。スチュアート対合 衆国郵政公社,73 M.S.P.R. 104,107(1997)参照。我々はその協定が文面上合 法であり、当事者達が進んでその協定を結び、かつ、本件の主題である’ハッ チ法違反により連邦政府職員に対し提起された懲戒処分に対する告訴’は合衆 国法典5USC§1215(a)及び1216(a)(1)に基づき、委員会の司法権の範囲内にあ るものとここに認定する。懲戒処分に対する最初の告訴状ファイル(ICF),表 1,表1の特別顧問局(OSC)の懲戒処分に対する告訴状を参照。それ故に、我 々は同一原因の再提訴を認めないために、懲戒処分に対する申立人の告訴を棄 却することがこんな場合には適切であると認定し、そして、我々は執行するた めに和解協定を公判録に取り込む。 ¶9 最終的に、我々は差し戻し後の行政法審判官の勧告案が委員会の差し戻し 命令に反し、若しくはその他本裁定理由及び命令における最終決定に反する限 り、我々はこれにより勧告案のその部分を無効にするものと評決している。 命 令 ¶10 それ故に、我々は環境保護庁に被告を30日間の停職にするよう命じる。 我々は特別顧問局に、本裁定理由及び命令、言い換えれば、被告は命令した通 り停職処分になっているかどうかを30日以内に委員会に通知するよう命じる。 これは本件に対するメリット制保護委員会の最終決定である。連邦規則集の表 題5の1201.125(c)(5)項及び1201.126(c)項参照。 当事者達への執行権通知 もし、申立人又は被告が協定の内容(約定)を充分に履行していないなら、ど ちらの当事者でも委員会書記官事務室に執行申立て書を敏速に提出することによ り、委員会に和解協定を執行するよう頼むことができる。申立て書には和解協定 の内容が充分に履行されていないと申請者当人が信ずる特別な理由を含まなけれ ばならず、及び当事者間の情報のやり取りの日付と結果を含まなければならない。 連邦規則集5CFR§1201.182(a)参照。 被告へのさらなる再審理請求権 に関する通知 貴方は合衆国連邦巡回控訴裁判所に本最終決定の再審理を要請する権利を有す る。貴方は下記の住所の裁判所に貴方の要請書を提出しなければならない。 合衆国連邦巡回控訴裁判所 20439 ワシントン D.C. マディソン プレイス N.W. 717番地 貴方が本命令書を受取ってから60暦日以内に、裁判所は貴方の再審理要請書を ぜひ受け付けたい。もし、貴方がこの場合に代理人を持ち、貴方の代理人が貴方 の前に本命令書を受取るなら、それなら貴方の代理人による受領後60暦日以内 に貴方は裁判所にぜひ届け出て欲しい。もし、貴方が届出を選択するなら、予定 通りに届け出るよう細心の注意を払うべし。裁判所は通常この法定期限を放棄す る権限を持っておらず、期限を守らない届出は却下されなければならないと考え ている。ピナート対人事局、931 F.2d 1544(Fed. Cir. 1991)参照。 もし、貴方が本決定を裁判所に控訴するための権利についてこれ以上の情報を 必要とするなら、貴方は貴方にその権利を与える連邦法を参照しなければならな い。それは合衆国法典表題5の7703項(5USC§7703)にある。貴方は我々のウエッ ブサイト、http://www.mspb.govで、本法律を読むことができ、同様に委員会の 規則及びその他関連資料を見直すことができる。付加情報は裁判所のウエッブサ イト、www.cafc.uscourts.govで入手できる。特に関連するものは裁判所の施行 規則に含まれる”自分で手続きする申立人及び上訴人のための手引き”、及び様 式5,6及び11である。 委員会を代表して ----------------------------- 委員会書記官 ウィリアム D. スペンサー ワシントン D.C. [訳者補足] 1.¶1のfiled a Joint Settlement Agreement withについて (1)これはfile 〜 with ・・・;’〜(書類など)を(正式に)・・・に提出する’ の構文ではない。何故なら、・・・に続くthat以下の関係節の先行詞はa Joint Settlement Agreementだから、with以下thatの前まではfiledの間 接目的語であってはならず、Agreementを修飾しa Joint以下thatの前まで が一体となって先行詞を構成するから。 (2)BISの2009.8.6(木)HPに次の記事がある。 DHL Signs $9.44 Million Joint Settlement Agreement with BIS and OFAC;DHLは$ 9.44百万のBIS及びOFACとの共同和解協定書に署名した。 (3)本文の主語はparties,述語動詞はfiledで、’当事者達はthat以下の行政 法審判官との共同和解協定書を提出した’となる。 2.¶2のand occupied in the discharge of his official dutiesについて (1)occupyは他動詞だから、もしoccupiedがその過去形なら目的語をとるはず であるが、それがないから過去分詞形である。be occupied in 〜 ;〜に 没頭するの成句がありbeingが省略されているものとすれば、この句が前 のengaging in 〜と等位接続されるものと分かる。 (2)discharge(名詞)には相反する「免除」と「履行」の意味がある。前述 の通り前の句と等位接続されるから、文脈上これは「免除」の意味でなけ ればならない。 (3)従って、本項の句は’及び彼の公務の免除に没頭する’と訳した。 3.¶2のthe Board granted 〜 in this case.の構文解釈について (1)これはthe Board granted 〜,reversed 〜,found 〜,and remanded 〜.の 如く4つの文節が等位接続されている。 (2)4番目の文節の構文について EAR§766.7(b)(1)に次の用例がある。 remand the matter to the administrative law judge for further pro- ceedings.;(次官は)本件を行政法審判官に差し戻し更なる手続きをさ せることができる。 ここではfor 〜に代わるものがto allow 〜と見なせる。また、evidence and argumentは共に前置詞onを取れるので対句と見なし訳した。 4.¶3のthe parties stipulated, and requested 〜の構文解釈について (1)and requested that the Board find,のfindは従位接続詞thatで導かれる 名詞節that the respondent's 〜を取る。また、その前の節中のstipula- tedも併せて同じ名詞節を取る。 (2)なお、the Board findにおける述語動詞findは主語が三人称単数だから findsとなるはずだがここでは動詞の原形が用いられている。従って、こ の文節は仮定法現在形であり願望を表す。 5.¶4のThe ALJ noted 〜 suspensionの構文解釈について (1)これは,and the administrative以下とその前の2つの文に分けられる。 (2)前の文中that the Board 〜 cases,はその前のthe six factorsを先行詞 とする関係節であって、これを独立した文とした時は次のようになる。 the Board has found the six factors relevant in 〜 cases, また、文中notedは従位接続詞thatで導かれる名詞節that the respondent addressed 〜を取る。addressedは’真剣に取り組んだ’を意味する。 (3)後の文中concludedは従位接続詞thatで導かれる名詞節that these factors 〜を取る。さらにmitigationはmitigateの名詞形でありmitigate について次の用例がある。 (be) mitigated to some extent;ある程度緩和される そこでmitigation of 〜 to the minimal ・・・について、他動詞を名詞に 置き換える時、名詞+of+直接目的語,その他前置詞+間接目的語で表すも のと考え前記の〜を直接目的語the minimal ・・・を間接目的語とし、’〜 を最小限度の・・・まで軽減する’と訳した。 6.¶7におけるwhether the parties have以下の構文について (1)次の3つの文節が等位接続されている。 @have freely entered into a settlement agreement, Aunderstand its terms, Band intend to have the agreement entered into the record for purposes of enforcement by the Board. (2)enter intoには色々な意味があるが関係のありそうな訳を示す。 (関係・協約などを)結ぶ、〜の一部[要因]となる また、have+目的語(〜)+過去分詞(・・・)で〜を・・・させるの意味になる。 (3)上記(1)に対応するものが本項の3番目の文のWe find here以下にある。 そこでBに対応するものは、that they want the Board to enforce those terms.;彼等(parties)は委員会がその約定を執行するよう望む。 従って、Bの訳は’委員会による執行を目的にその協定を公判録に掲載さ せる’とした。 7.¶8の最後の文におけるdismissal of 〜 refillingについて (1)dismiss 〜 with prejudice;〜を確定力のある決定として退ける、また、 with prejudice to refilling;同一原因の再提訴を認めないために。 (2)従って、’同一原因の再提訴を認めないために、懲戒処分に対する申立人 の告訴を棄却すること’と訳した。 (3)with prejudice to refillingに関し次の用例がある。 Arkansas Supreme Court No.CR 05-812より抜粋 The trial court denied the petition "with prejudice to refilling of another petition to vacate or petition to set aside judgment." ’第一審裁判所は無効にするために別の申立て、若しくは判定を取り消す ために申立てを再提訴することの制限によって当該申立てを拒絶した。’ この制限は「一事不再理」の原則に基づくもので、参考資料(tadhomma, ワトソン事件)より’同一原因の再提訴を認めないために’と訳した。 [原文]2009 MSPB 63