(証言)合衆国上院銀行住宅都市委員会の面前での 産業安全保障担当商務次官代行 ダニエル O. ヒルの陳述 2009年10月6日 委員長殿、シェルビー上院議員、委員会メンバーの皆さん: 合衆国製軍民両用品目のイランに対する輸出規制政策を管理し執行するための商 務省の役割について議論するために、本日委員会に出席できる機会を私は喜んで 受け入れる。我々は長年の合衆国によるイランへの通商禁止を有効に実施するた めに、国務省及び財務省、同様にその他機関の同僚達と親しく仕事をしている。 合衆国は1995年の5月以来イランへの禁輸処置を行っている。テロリズムに対す るイランの活発な支援の継続及び大量破壊兵器の開発を推進していると言う懸念 のために合衆国はこれらの措置を取った。 イラン向けの全ての輸出は輸出管理規則(EAR)と財務省のイラン取引規則の 両方の規制を受ける。財務省はその禁輸措置を管理する主導機関であり、そして その措置は商務省管轄下の品目の輸出及び再輸出に関する禁止ばかりでなく、財 務省管轄下の金融取引及び投資に関する包括的制限も特徴とする。 商務省は、しかしながら、イランへの禁輸措置の幾つかの側面で責任を負う。 第一に、商務省は財務省の許可に基づきイランへ輸出又は再輸出することを提起 された品目の適切な分類に関して技術援助を財務省に提供する。1992年のイラン ・イラク武器拡散防止法(50 U.S.C. 1701の注)は、大統領免除がない限り、通 商管理リスト(CCL)上の品目のイランへの輸出又は再輸出について、産業安 全保障局(BIS)に殆どの場合許可を拒絶するよう要求している。ある品目を イランへ輸出するための申請書を検討する際に、財務省は当該品目がCCL上に あり、そうであれば免除なしのイラン向け輸出は禁止されているかどうか知らな ければならない。商務省は当該品目がCCL上にあるか否かを決定し、財務省に 報告する。 第二に、商務省はEARに違反してイランへ輸出又は再輸出される可能性のある 取引を調査することにより、この通商禁止を実施する上での決定的な役割を果た す。EARの規制を受ける品目を財務省の承認なしに輸出又は再輸出することは 殆どの場合EAR違反になる。産業安全保障局(BIS)は全米の10の出張所に 大体100人の連邦法執行官を擁する。その出張所はボストン、ニューヨーク、ワ シントン、マイアミ、シカゴ、ダラス、ロサンゼルス、サンノゼ、ヒューストン ;及びワシントンDC地区にある。BIS執行官がさらにワシントンのここ商務 省本部に配置されている。これらの執行官は、もしそれが悪者の手に渡れば我々 に害を与えることになる品目の違法移転を防止する取り組みの最前線にいる。 それに加えて、商務省は外国の5つの場所に輸出管理官(ECO)を有している。 それはアラブ首長国連邦のアブダビ;北京及び香港;ニューデリー;モスクワの 5ヶ所。2010会計年度(FY)において、BISはシンガポールに1人のECOを北 京に2人目のECOを配置する認可を得ている。これらのECOは米国・在外商 務部に一時的に配属されている産業安全保障局の(法の)執行官を当てる。EC Oは当該品目が合法的に使用される見込み、若しくは使用されていること及び前 記品目が輸入国内で禁止された利用者又は利用に流用されていない、或いは不正 に別の国へ例えばイラン等へ積み替え輸送されていないことを立証するために許 可前チェック並びに出荷後証明のための臨検を行う。 商務省はイランへの積み替え輸送に関与する可能性のある国を含むその他の国々 と、それらの国の輸出及び積み替え輸送管理体制を確立し強化するために、共に 働けるように国務省及びその他の機関と緊密に連携している。こうして、それら の国々が自国の領土内で例えばイラン等の国へ品目を不正に輸出している者達に 対して措置を取れるようにするのに加えて特定の取引に関し我々に協力できるよ うにする。 商務省は併せてイランに対する合衆国の輸出規制を実施するための独特のツール を生かすことができる。これらのツールには暫定的禁止命令(TDO)及び企業・団 体リストを含む。TDOは一度に180日間、差し迫ったEAR違反を防止するた めに、迅速に公布できる法的な命令である。例えば、2008年に我々はBalli Group 公開有限責任会社[PLC]及び関連会社及び個人("Balli Group"と呼ぶ)、 Blue Airways並びにマハン航空の輸出特権を180日間拒絶するTDOを公布した。 我々の捜査官が入手した証拠によれば、その者達は3機の合衆国原産航空機をイ ランへEARに違反することを知りながら再輸出し、さらに3機の合衆国原産航 空機をイランへさらに続けてEARに違反して再輸出する準備をしていた。その TDOは合衆国又は外国の当事者達が当該航空機関連の活動に従事することを有 効に防いだ。最終的に、そのTDOは3機の民間航空機のイランへの不正な再輸 出を防止した。 企業・団体リストはCCLに掲載されていない品目を含むEARの規制を受ける 品目のそこに掲載された企業・団体への輸出又は再輸出を禁止するために利用で きる規制用ツールである。2008年に産業安全保障局は75名の外国人を、簡易爆 発物(IEDs)を構成するのに利用可能な合衆国原産の電子的な部分品及び機器を不 正に獲得しようと努める全世界的な調達網に彼等が関与したと言う理由で、企業 ・団体リストに追加した。これらの貨物はイラク及びアフガニスタンにおける多 国籍軍に対する簡易爆発物(IEDs)又はその他の爆発装置に利用されていた。この 調達網は合衆国原産貨物を獲得し、それらを不正にイランへ輸出した。これらの 者を企業・団体リストに追加した結果、合衆国又は外国の当事者の誰一人EAR の規制を受ける品目を許可なく彼等に輸出又は再輸出してはならない。ある品目 をこれらの企業・団体のいずれかに必要とされる許可なく輸出又は再輸出するこ とはEARに違反することになる。 それに加えて、商務省は順次、成功裏に実施活動が行われた幾つかのイランに関 係する重要な事件の調査を率いてきた。商務省は現在のところ235件のイランに 関係する公開調査を行っている、その件数はEAR違反の潜在的可能性のある全 ての公開調査件数のおよそ29パーセントを占める。私は2008年内に結論が下され たイラン向け不正輸出についての起訴の概要を添付した。 我々の軍民両用品目の輸出規制を施行するための商務省の権限は1979年の輸出管 理法(EAA)に基づいている。この法令は、しかしながら、2001年以来失効し ている。EAAが失効している間、合衆国製軍民両用品目の輸出規制体制は国際 緊急経済権限法(IEEPA)の権限に基づき維持されている。ごく最近、大統領は 2009年8月にIEEPAに基づく商務省の権限を更新した。 我々の姉妹法執行機関との協力が、イランへの無許可輸出を防止し係る輸出をす る者に対する制裁目的を達成するための我々の努力を成功させるのに一番大切で ある。我々は連邦捜査局(FBI)、合衆国移民税関捜査局、及びその他幾つかの機 関と協力して仕事をしている。なお、これにはイランの国際テロリズム支援及び イラン制裁法違反に関与する者を含め、輸出管理法違反に焦点を合わせたFBI 主導の合同テロ対策特別グループに参加することにより協力して仕事をすること を含む。 最終的に、商務省はイランへの通商禁止に関する民営部門への教育を着実に広め るための活動計画を維持している。我々は輸出者が従うべき詳細なガイダンスを 我々のウェッブサイトに持っている。我々はイランへの禁輸措置に関して、(解 決の)鍵となる企業例えば、運送会社、物流一貫サービス業者、航空貨物運送業 者、及び船会社にもまた焦点を合わせている。我々の取り組みは、ペルシャ湾地 域におけるだけでなく東南アジアについても、主要な積み替えハブに本拠を置く 企業と手を結ぶこと、それが合衆国原産物品のイランへの不正積み替えになる可 能性を有すること、に対する警戒態勢を輸出者に教育することを目標とする。 最後に、商務省はイランへの通商禁止の管理及び執行で重要な役割を果たしてい る。これから皆様からの質問に答えさせて頂ければ幸いです。 イラン向け輸出又は再輸出に関係する最近の商務省執行事例の概要 ・2009年1月30日、ジェームズ グリピン,オイスター ベイ ポンプ製作所の 元販売責任者は大体30万ドルと評価される実験装置のアラブ首長国経由でのイ ランへの輸出未遂に関連して、3年の保護観察と100ドルの特殊課税の判決を 受けた。2008年5月1日、パトリック ゲーリャード,オイスター ベイ ポン プ製作所の社長は、輸出未遂への関与を理由に、30日の禁固刑、2万5千ドル の刑事罰金、3年の執行猶予、及び300ドルの特殊課税の判決を受けた。 ・2009年6月11日、トライアン Bujduveanu,オリオン航空のオーナー経営者は、 イラン国防産業機構への民間及び軍用航空機部品の不正輸出における彼の役割 に対して、3年間の監視下の保釈の付いた禁固35ヶ月の判決を受けた。 ・2008年12月10日、ニコラウス グロースは、ルクセンブルグにあるバイキング コーポレーションの子会社の理事としての地位を利用して合衆国原産消火機器 のイランへの積み替え輸送をするたくらみへの関与に対して、60日の禁固刑、 1年間の監視下の保釈、24万9千ドルの刑事罰金、及び400ドルの特殊課税の判 決を受けた。 ・2008年8月28日、デズモンド フランクは、国防関連物品のイラン及び中国向 け輸出への関与に対して、23ヶ月の禁固刑、500ドルの刑事罰金、及び600ドル の特殊課税の判決を受けた。 ・2008年8月7日、ジェームズ Angehrとジョン ファウラー,エンジニアリング ダイナミックス社の共同所有者達は、ブラジル経由イランへのソフトウェア輸 出未遂への彼等の関与に対して、5年の執行猶予の判決を受けた。Angehrはそ の上に6ヵ月の更生保護施設における監禁の判決を受け、そしてファウラーは 4ヵ月の更生保護施設における監禁の判決を受けた。各被告はそれぞれ25万ド ルの罰金を科せられ、かつ、218,583ドルを没収されるよう命じられた。2008 年5月22日、ネルソン Galgoulは、前記謀議への関与に対して、13ヶ月の禁固 刑、3年間の監視下の保釈、10万ドルの刑事罰金、及び109,291ドルの没収の 判決を受けた。 ・2008年2月8日、Mojtada Maleki-Gomiは、必要とされる輸出許可なく繊維製品 をイランへ輸出したことに対して、18ヶ月の禁固刑と20万ドルの刑事罰金の判 決を受け、そしてBabek Malekiは、同一の輸出案件に関連して虚偽の申立てを した事に対して、12ヶ月の保護観察の判決を受けた。 [訳者補足] 1.Mr. Chairman, 〜 the Committeeについて 上院銀行住宅都市委員会のCommittee Information.Membershipから抜粋 Christopher J. Dodd Chairman (D-CT) ;委員長 (コネティカット州選出民主党) Richard C. Shelby Ranking Member (R-AL);幹部委員 (アラバマ州州選出共和党) その他、民主党12名、共和党9名の委員から構成されている。 従って、表題の訳は’委員長殿、シェルビー上院議員、委員会メンバー の皆さん’となる。 2.2番目の段落のbecause of 以下の構文について concerns that 〜のthatは接続詞で’〜と言う懸念’を意味する。また、 that以下の節中のweaponsはpursueの目的語であって、この文節の主語に はなれないと思うから、itは漠然と状況を指す非人称のitと考える。 従って、ofの目的語は・・・terrorismまでとconcerns以下の両方となる。 3.4番目の段落のPresidential waiverの訳について 例文をhttp://www.zoa.org/sitedocuments/pressrelease_view.より抜粋 The Zionist Organization of America (ZOA) has praised Senator Sam Brownback (R-KS) for announcing plans to introduce legislation in Congress that would remove the presidential waiver from the law calling for the U.S. Embassy in Israel to be moved from Tel Aviv to Jerusalem. The legislation mandating the move of the Embassy to Jerusalem became law in 1995 and was approved by over 90% of both the U.S. Senate and House of Representatives. 「アメリカのシオニストの組織(ゾア)は、サム ブラウンバック上院議員 (共和党、カンザス州選出)がイスラエルの米国大使館をテルアビブから エルサレムへ移動することを要求する法律から、大統領免除特権を削除す る法案を導入する計画を発表したことを称賛している。エルサレムに大使 館を移動することを義務付ける法律は1995年に成立し、米国上院と下院の 両方の90%以上により承認された。」 waiverは(権利等の)放棄(証書)を意味しvisa waiver;査証免除の如 く用いられる。上記例も合せ考えると、これは権利を放棄する他にその執 行を免除して貰う意味もあり、上記例のように訳した。 4.6番目の段落のU.S. & Foreign Commercial Serviceの訳について http://en.wikipedia.org/wiki/United_States_Commercial_Service のhistoryより抜粋 1980 The Foreign Commercial Service is established under the U.S. Department of Commerce. The name is changed to the U.S. & Foreign Commercial Service in 1981 in order to emphasize the linkage of domestic and overseas operations under a single organizational purpose. 1980年に商務省管轄下に在外商務部が設立され、それが翌年に国内と海外 部門間の連携を強調するために’米国・在外商務部’に名称変更された。 5.12番目の段落のincluding by participating in 〜の訳について ここでincludingもbyも前置詞であり、byは本節のwork in concertに掛か るもので、’by以下により(協力して働くこと)を含めて’の意味である。 従って、表題の訳は’に参加することにより(協力して働くこと)を含め て’となる。 (参考)例文をhttp://jp.reuters.com/article/の著作権に関する注から抜粋 Republication or redistribution of Reuters content, including by caching, framing or similar means, is expressly prohibited without the prior written consent of Reuters. この例では’caching等により(Republicationなどすること)を含め て’となる。(by;手段・・・によって) 6.13番目の段落のintegrator及びvigilance inについて (1)http://www.customs.go.jp/kyotsu/yogosyu.htmの税関関係用語集より Integrator;インテグレーター:国際宅配業者など、貨物の集配及び幹線 輸送を自ら一貫で行う物流事業者。 これより、’物流一環サービス業者’と訳す。 (2)vigilance inの用例をhttp://www.eigotown.com/eigocollege/westwing/ backnumber/westwing_52.shtmlより抜粋 our vigilance in the face of oppression and global terror will be unequaled by any moment of human history. 世界的なテロや圧制に対し、我々は人類史上、未だかつてないほどの警戒 態勢をとっているのです。 これより、’〜に対する警戒態勢’と訳す。 7.「概要」の2番目の記事のin prison followed by 〜について これは’〜(執行猶予等)の付いた禁固刑’を意味する。3番目、5番目 の記事にはfollowed byが付いていないが、〜に相当する監視下の保釈、 又は執行猶予が記されている。保釈又は猶予の期間が記載されていれば、 その期間中は問題を起こさない限り収監されることがないと思う。 8.「概要」の5番目の記事のNelson Galgoulについて 連邦検事事務所の2008.5.23の速報より抜粋 Specifically, GALGOUL acted as an agent for EDI in the marketing and support of SACS and also provided training to engineers and technical personnel in the use of SACS. ここで、EDI:Engineering Dynamics, Inc. (5番目の案件のエンジニアリング ダイナミックス社) SACS:Structural Analytical Computer Software (構造解析計算機用ソフトウェア) これより、表記の者は本件のEDI社の(ブラジルにおける)代理人であっ て、本件不正輸出の共謀者であることが分かる。 [原文]Statement of Daniel O. Hill