『森首相降しとIT』          2000.11.30
      

   11月21日の衆議院本会議場は空席が目立った。これから野党4党が共同で提案し
  た森内閣不信任決議案の審議が行われるはずである。自由民主党元幹事長、加藤紘一氏
  率いる加藤派45名及び山崎派の19名は出席して、不信任案賛成に廻るのではないか。
  それにしてはやや緊迫感に欠けるように見える。
  しばらくすると、加藤派は野中幹事長を中心とする主流派の切り崩しに会い池田氏など
  18名が離反し、やむなく賛成から欠席に戦術ダウンしたことが明らかになった。
  加藤氏の派内総会での無念そうな様子がテレビに写し出された。
  議場では民主党鳩山代表による内閣不信任決議案提案理由説明があり、その後与党各党
  代表による反対演説があり、途中保守党の松浪健四郎議員によるハプニングなどがあり、
  採決は翌日の未明に行われ、賛成190票、反対237票(欠席52名、議長は採決に
  不参加)で否決された。
  賛成票の190票は野党4党の全ての票である。従って、加藤、山崎派を含む与党は勿
  論、21世紀クラブ及び無所属から1票も賛成に廻っていない。
  (実際は民主党から1名の欠席者があり、無所属から1名賛成者があったようである)
  一方、加藤、山崎派を除く与党3党の持ち票は208票であるが、その中に病欠等欠席
  者が5名あったので、反対票の上積み分は34票になる。22日付けの朝日朝刊による
  と21世紀及び無所属からの反対者は8名となっているから加藤、山崎派からの反対者
  は26名と言うことになる。
  また、加藤、山崎派を除く欠席者数は14名となっているから、加藤、山崎派からの欠
  席者数は52−14=38となり、反対者数(45+19)−38=26となり、前記
  と一致する。即ち、加藤、山崎派の離反者は池田氏ら18名の他8名あることになる。
  これらの離反者数は両派議員数の約40%にもなる。
   結果的には、加藤氏は足元を掬われた形になりその戦術の甘さが露呈されたことにな
  った。この「加藤氏の乱」は実質的には(公家集団の)加藤派対(戦闘集団の)橋本派
  の戦いであったと言えそうである。加藤氏は不信任案上程の前日までテレビに出演し、
  世論を背景に高揚した様子で喋っていたが、先ず足元を固めるべきであった。実際、彼
  がようやく自派閥の会合に出席し、皆さんに説明することが後回しになったと言って詫
  びている様子を見たことがある。
  一方、主流派の方は表立った動きは見せず、数こそが勝敗を決めると現実を直視し最も
  効果的な加藤派の切り崩しに走った。さらに、小選挙区制に伴う強力な幹事長権限を背
  景に造反者は断固除名すると脅し、その他離反者を出さないよう手を打っておいた。
  主流派がここまで懸命に行動したのは、もし加藤政権誕生と言うことになると、森首相
  を密室で選んだ五人組みが失脚することになる。この五人組みの中心は、橋本派の野中、
  青木両氏であり、もし彼等が失脚すれば橋本派が主流派から転落すると考えたからだと
  言われている。
  世論は概ね加藤氏の裏切りに憤慨し或いは茶番劇と冷笑したが、良くやったと言う人も
  いる。森首相は「失言はしたが、失政はない」と言っているけれど私は失政だと考えて
  いる。加藤氏も借金漬けの経済運営では景気の回復は望めないと言っていた。
  彼は長いドラマの始まりであり、先ず森降しをしてから次いで政策の提示を行うと言っ
  ていたが、この挫折によりそれが提示される機会が失われたことは残念である。
   ところで、今回の加藤氏の戦術の一つに森首相が良く口にするITの活用があった。
  それは、加藤氏個人のホームページに彼の所信を掲載し、直接国民と対話する形を採ろ
  うとしたことで、時には一週間のアクセス数が11万件にも及んだことがある。多くの
  激励や意見が寄せられたそうである。しかし、それらの対話が永田町を動かすことはな
  かった。永田町を動かすのは選挙に直結する場合である。
  このことから、加藤氏は対話と並行して「森首相退陣請願書」の署名集めを行うべきで
  はなかったかと私は思う。もし百万名の署名を集めることができれば、それは次の選挙
  を森首相で戦うとすれば、これらの人々は確実に自民党には投票しないであろうと予測
  でき、従って永田町を動かし森首相退陣に繋がるものと思う。
  どうすれば短期間にこのように膨大な署名を集められるか。それはITを活用すること
  であろう。先ず考えられるのはメールである。どの程度の規模になるか簡単に試算して
  みる。
   [1アドレス当たりのメモリ容量の試算]
     (1)アドレス数;100アドレス
     (2)電文の容量;1KB/件
        上記の如く仮定すると
     (3)電文数;1万件/アドレス
     (4)メモリ容量;10MB/アドレス  
        となるから実現可能と考える。
  ここで、このような電子請願書が現在法的に認められるか知っておく必要があろう。
  しかし、例え現在は無効だとしても近い将来必ず有効になろう。その場合には下図のよ
  うな印影を用いるのか、或いは印鑑証明に代わる電子認証機関の証明を使用するのかは
  別途検討したい。これから電子商取引が普及するにつれて、前記の認証機関の必要性は
  高まるものと思われる。
        「請願書」
    私は森内閣の退陣を請願します。 
         浦島太郎  XX県XX市XX町XX番地  
                                       以上