『"sweetie barrel"の話し』       2006.12.31

      



 私達夫婦はNHK BS2で放映中の韓流ドラマ「春のワルツ」を楽しみにし

て毎週見ています。これは甘く切ない純粋な愛を描くラブストーリーです。

小さな美しい島で展開される、幼少の頃のスホ(後にジェハ)とウニョンの無心

な信頼の絆と過酷な現実がどちらに偏ることもなく描かれています。

それから二人は分れ分れになり、成人してから偶然オーストリアで再会します。

ジェハは早めに気付くようですが、ウニョンは知らないままストリーの展開が進

むにつれ二人の間に愛が育まれます。

それがとても自然な愛情表現として現れています。ウニョンが運転する車の後部

座席からいとおしむようにウニョンの背もたれに身を寄せるジェハ、その姿をバ

ックミラーで眺めるウニョンの表情などとても印象的です。また、ジェハがウニ

ョンを想って作曲した曲を弾きながら、別の場所にいるウニョンに携帯電話で聞

かせる場面や、二人でドライブしている最中に助手席にいるウニョンの手を握る

ジェハの心理描写も自然なものでした。

このような心理状態はウニョンやジェハに限ったものではなく、誰でも経験した

り、或いは誰にもそのような機会が等しく与えられる可能性が秘められています。

それは素晴らしいことです。

待ち受ける人生は苦難に満ちていると考えるのが一般的です。そのために、人は

悩み、苦しみ、救いを求めます。それに一筋の光明を見出された多くの先達がお

られます。しかし、倫理、宗教、哲学、文学、どの方面においても完全解は未だ

見出されていないように思います。仏陀やキリスト等の大宗教家の教えさえ現代

社会との乖離が少しずつ顕著になり衰退傾向にあるように思えてなりません。

そのような現代においても、「生きることは素晴らしい」と言える達人がおられ

ます。それには既存の宗教観によらない方々もおられるように思えます。

もし、それが人との接触から完全に隔絶した無人島において言われたことなら、

その人は大聖人か独善者でしょう。私がテレビや本などで見聞きした人はそうで

はありません。恐らく他人との接触の中で得られた実感がそう言わせているのだ

ろうと思います。

ドラマのウニョンやジェハは幼少期から青年期までですが、この達人は壮年から

老人までおられ同様に自然な形で得られた心理状態だと思うのです。これもまた

達人に限定されるものではなく、誰でも経験したり、或いは誰にもそのような機

会が等しく与えられる可能性が秘められていると思います。それは素晴らしいこ

とであり、神から人間一人一人に賜った大いなる恩恵と考えます。

神に似せて人が作られたなら、神にも邪悪な心があるのだろうと言う人もおられ

ます。それはさておき、人間は前述の素晴らしい心の持ち主でもあり、邪悪な心

も併せ持つ者でもあります。人生の中でそれらをどのように制御するかは個人の

責任に帰する問題です。

しかしながら、人の遺伝子の中に幼少期から青年期までは勿論のこと、壮年から

老人に至るまでもあの自然な形で得られる充実感が仕組まれている(プログラミ

ングされている)とは大変有り難いことではないでしょうか。

思うにこれは、人の肉体は生れた時から死ぬまで食物を摂取するよう仕組まれて

いるのと同様に、人の心(私は物理的にも肉体の一部と思っています)も同様に

生から死までいつでも充実感を得られ仕組みが組み込まれているのだと思います。

そうでなかったら、心の方は早々と死滅するからではないでしょうか。

私はこれまで求めても確固たるものは得られませんでした。それでも謙虚な気持

ちで粘り強く頑張ることしかできないと思ってやってきました。

そうすることによって、ひょっとしたら人の遺伝子の中に仕組まれたあの充実感

を得られる時がくるのではなかろうかと思うと大変嬉しくなります。希望を捨て

絶望に向かうことなく、謙虚に粘り強く生きて行かねばならないと改めて思う所

です。

 さて、本題の"sweetie barrel"の話しに入りましょう。これは趣味でやってい

る米国の輸出管理規則の翻訳の話しです。この術語はロケット等の推進薬製造装

置の一部を表わし、直訳すれは砂糖菓子製造樽です。推進薬を製造するのに何故

砂糖菓子が関係するのか分かりません。辞書を引き、webサイトを調べても中々

解答が見つかりません。

amazon.com のkey phrase 検索をして見ると、花火の作り方に関する本の中にこ

れが出てくるのです。そこで分かったのは、これは本来、球状の砂糖菓子を作る

ための装置であって、花火製造においてはその中で火薬を詰めた球の上に接着剤

とおがくずの層を交互に形成するために使われているようです。それはお菓子製

造におけるコーティングに類似しています。短い文章なのですが現在分詞や過去

分詞が多用されており、ここまで理解するのにその他多くのことを調べなければ

なりませんでした。

この規則の管理元である米国商務省の産業安全保障局(BIS)に問い合わせし

ました。その回答によると、これはコーティング用の大形回転ドラムであって、

粒状の材料をこのバレルに注ぎ、最終製品である推進薬の燃焼速度を均一化させ、

又はその他望み通りの反応を起こさせるために前記材料にコーティング剤を噴霧

する装置と言うことでした。

それでも"sweetie barrel"をコーティング用の大形回転ドラムと訳すには未だ抵

抗があり、国内における一般的な呼称がないものかと幾つかの機関に尋ねて見ま

した。(財)安全保障貿易情報センター(CISTEC)発行の輸出管理品目便

覧の中で、本題の術語を含む部分の訳が出ていることが分かりました。その訳は

次の通りです。

「内径で1.85m以上、重量227kgを超える被研磨剤容量を有するバレル研磨機

(タンブラー)」

ここでは、これがバレル研磨機となっており、BISの言うコーティング用の機

械とは異なります。CISTECに相違する理由を尋ねましたが、便覧も10年

位前に廃刊になっており当時のことを知る人も残っていないので分からないと言

うことでした。そして、両論併記の形で纏めたらどうかとも言われました。

しかし、バレル研磨機について調べて見ると、これは洗濯機の水槽のようなもの

の中で研磨剤をワークに衝突させ、バリ取り、表面研磨等をする機械であり、爆

薬の製造には危険で使えないと思いました。そこで、BISの言うコーティング

装置と訳すこととし、補足で両論のあることを記載しました。

翻訳は文字の置き換えではなく、対象とする文章の意図するところを日本語で示

すことだと思うので、その趣旨が充分に理解できないと困ります。予備知識の無

い品目に関する規制文を訳す時は、特に英文の文法的、慣用的構造を正確に把握

し理解する必要があり、その辺の知識のなさを痛感しています。

また、今回のような訳文の相違も条約の訳文においてあったと言う話しを新聞な

どて見たような記憶があります。誰が原文と照合しようとも、同じ趣旨を汲み取

れるような翻訳を目指して努力したいと考えています。

                                以上