暗号化品目

         (CCLを基礎とする管理の§742.15) 

                

§742.15 「暗号化品目」

 暗号化品目は情報の秘密を維持するために使える。そのために、合衆国の国家

安全保障、海外政策及び法律の執行権益を損なうよう外国の者により使用される

可能性もある。合衆国は、公共及び個人分野の重要かつ極秘の情報が保護されて

いることを保証するのに重大な関心がある。ワッセナー協定の一員としての我々

の国際的責務との整合性に配慮し、合衆国は暗号化品目の輸出及び再輸出に係わ

る管理を維持する責任を持つ。1996年11月15日の大統領令13026で、

及びその覚書で大統領が述べた通り、暗号化ソフトウェアの輸出及び再輸出は、

同様に暗号化ハードウェアの輸出及び再輸出は計算機システム上の情報を暗号化

するこの機能面での能力の故に規制されるのであって、前述のソフトウェアが反

映し、含有し、表現する、若しくはその輸出又は再輸出が外国のその他の者に譲

渡するところの、情報的又は論理的価値によるのではない。こう言う由なので、

暗号化ソフトウェアに関する輸出規制はEARで規定される他のソフトウェアに

関する規制とは区別される。

(a)許可要件及び政策

 (1)ECCN 5A002,5D002又は5E002に基づき規制される暗号化品目

   (@)許可要件

    ECCN 5A002,5D002又は5E002に基づき規制される暗号化品目(規制理由

    "EI")をカナダを除く全ての仕向け地に輸出或いは再輸出するには許可が

    必要である。一定の暗号化品目に適用される許可例外についてはEAR

    の740章を、また暗号化品目及び術語の定義についてはEARの

    §772.1を参照のこと。輸出者は、許可例外が適しない暗号化品目の輸出

    及び再輸出について、許可若しくは暗号化許可協定(ELA)に基づく認可を

    得るために申請書を提出しなければならない。

   (A)許可政策

    BISは、その他の機関と共に個々の事例に従って当該輸出又は再輸出

    が合衆国の国家安全保障及び海外政策に係わる権益と一致するか否かを

    決定するために申請書を審査する。政府若しくは政府特有のサービスを

    提供するインターネット及び電気通信サービスプロバイダー向け暗号化

    品目の輸出は好意的に民生用途と考える。それら用途として、例えば、

    一般向け社会福祉又は財政支援;市民権活動(civil justice);社会保険、

       年金及び退職金関係;税及び政府とその市民間の連絡等がある。暗号化

    許可協定は、740章の補足No.1のカントリーグループE:1に一覧表示さ

    れた国を除く全ての仕向け地向けに、暗号化品目を量的制限なしに輸出

    及び再輸出する認可を与える。暗号化許可協定は、暗号化技術の合衆国

    の会社の戦略的共同経営者(EARの§772.1に定義するところの)への

    輸出及び再輸出を認可するものを含めて、四年間有効であり、また報告

    を要件とする。暗号化許可協定に対する認可を求める申請者は、当該許

    可申請書上の販売地域及び最終需要者の等級を明記しなければならない。    

 (2)ECCN 5A992,5D992又は5E992に基づき規制される暗号化品目 

   (@)許可要件

    ECCN 5A992,5D992又は5E992に基づき規制される暗号化品目は、通商カント

    リーチャート(EARの738章の補足No.1)のATカラム1又はATカラム2に一

    覧表示される国向けに、それに当てはまる限り、規制理由テロ防止(AT)

    により規制される。許可証はまたEARのその他の箇所に明記されてい

    るその他理由(例えば、通商禁止)により一定の仕向け地又は個人につ

    いて要求されることがある。それに加えて、これらの暗号化品目は本項

    の(b)(1)及び(b)(2)節に記述された届け出又は審査要件の規制を受ける。

    但し、本項の(b)(3)節により明確に除外されている場合はこの限りでは

    ない。

   (A)許可政策

    BISは、その他の機関と共に個々の事例に従って当該輸出又は再輸出

    が合衆国の国家安全保障及び海外政策に係わる権益と一致するか否かを

    決定するために申請書を審査する。BISは、EARの740章、補足

    No.1のカントリーグループE:1に一覧表示された国向け暗号化品目の輸出

    及び再輸出について暗号化許可協定の適用を認めない。

(b)ECCN 5A992,5D992又は5E992に基づき規制される暗号化品目に対する届け出及

  び審査要件

  本項の(b)(1)及び(b)(2)節に記述された届け出及び審査要件を満たしていれ

  ば、本項の(a)(2)節に従いECCN 5A992,5D992又は5E992に基づき規制される暗

  号化貨物、ソフトウェア及び技術を大部分の仕向け地に許可なしに(NLR:許可

   不要)輸出及び再輸出できる。ECCN 5A992,5D992又は5E992に基づき規制され

  る一定の暗号化品目は、届け出若しくは審査なしに輸出又は再輸出される−

  これらの品目は本項の(b)(3)節において確認される。それに加えて、船積み

  後の報告がECCN 5A992,5D992又は5E992に基づき規制される暗号化品目につい

  て要求されない。EARの§732.5の荷送り人の輸出申告書(SED)、用途規制

   文(DCS)、及び許可なしに(NLR)輸出及び再輸出される品目についての記録保

   存要件を参照のこと。

 (1)指定暗号化品目に対する届け出要件

   本章の補足No.6の(a)から(e)節に記述された情報を、輸出するときまで

   に、BISへ及びcrypt@bis.doc.govとenc@nsa.govのENC暗号化要請調

   整官(ENC Encryption Request Coordinator)へ提出していれば、ECCN 

   5A992,5D992又は5E992に基づき規制され、かつ本項の(b)(1)(@)又は

   (b)(1)(A)節で特定される暗号化品目を大部分の仕向け地に許可なしに

   (NLR:許可不要)輸出又は再輸出できる。本項の(b)(1)(@)節に基づき提出

   する届け出については、当該製品が如何にして通商管理リスト(EARの

   774章、補足No.1)のカテゴリー5,パート2の暗号処理注(注3)

   の基準に基づく大量販売扱いする資格を有するかを記述した情報も併せて

   提供しなければならない。当該暗号化品目が本節(b)(1)に基づく輸出又は

   再輸出に適格かどうか自信がなければ、本項の(b)(2)節の要件(大量販売

   用貨物及びソフトウェアについて)に従い当該暗号化品目の審査要請を、

   若しくは許可例外ENCの条項(EARの§740.17参照)に基づく要請を、

     BISへ及びENC暗号化要請調整官へ提出しなければならない。ECCN

     5A992,5D992又は5E992により規制される次の暗号化品目は、届け出するだ

     けで、大部分の仕向け地に許可なしに輸出又は再輸出することができる。

   (@)64ビットまで(64ビットを含む)の大量販売用暗号化貨物及びソフト

    ウェア;

   (A)暗号化品目(鍵管理製品及び企業専有の処理系を含む)であって、鍵長

    が56ビットを超えない対称アルゴリズム、512ビットの非対称鍵交

    換アルゴリズム、及び112ビットの楕円曲線アルゴリズム;

 (2)64ビットを超える大量販売用暗号化貨物及びソフトウェアに対する審査

   要件

   鍵長が64ビットを超える対称アルゴリズムを使用した大量販売用暗号化

   貨物及びソフトウェア(前にBISにより審査を受け、ECCN 5A002または

   5D002に基づき輸出された前述の製品を含む)は、相変わらずEARの規制

   を受けており、本節(b)(2)に基づく輸出又は再輸出の前に、BISによる

   審査を必要とする。EARの§740.17(b)(2)に記述された暗号化貨物及び

   ソフトウェアは大量販売扱いする資格がない。

   (@)審査要請のための手続き

    当該大量販売用暗号化製品の審査を要請するために、BIS及びENC

    暗号化要請調整官へ本742章の補足No.6の(a)から(e)節に記述され

    た情報を提出しなければならず、また当該製品が如何にして通商管理リ

    スト(EARの774章、補足No.1)のカテゴリー5,パート2

    (”情報セキュリティ”)の暗号処理注(注3)の基準に基づく大量販

    売扱いする資格を有するかを記述した詳細な情報を含まなければならな

    い。審査要請は、EARの§748.3に記述されるところの 様式BIS-748P

    (多目的申請書)又はそれと電子的に同等なもので提出されなければな

    らない。確実に審査要請書が正しい部署に回送されるようにするために、

    申請書様式の区画9(特殊目的)に”大量販売用暗号”の文句を書き入

    れ、また区画5(申請の種類)の”分類要請”となつているチェックボ

    ックスに”X”を記入すること−区画5は暗号化審査要請書の提出に対

    する独立したチェック項目を用意していない。これらの項目を正しく記

    入しなかった場合には、当該審査要請の検討に遅延を生ずることも有り

    得る。電子的にBISへ提出されない審査要請書はEARの§748.2(c)

    に示された宛先に郵送されなければならない。ENC暗号化要請調整官

    への提出は宛先をEARの§740.17(e)(5)(A)に示す郵送先住所としな

    ければならない。もし、審査要請に係わる質問があれば(例えば、裏付

    け文書が見当たらない、又はそれが不完全という理由で)、BISは貴

    方に通知する。

   (A)BISによる措置

       BISがその審査を完了すれば、当該品目がECCN 5A992又は5D992に基

    づき規制される大量販売用暗号化貨物若しくはソフトウェアとしての輸

       出又は再輸出に適するか文書による確認を、貴方は受け取ることになる。

       もし、その審査中に当該暗号化品目がEARに基づく大量販売扱いに適

       格しない、或いは別途ECCN 5A002,5B002,5D002,又は5E002に基づき規制

       されるとBISが決定すれば、BISは貴方に通知し、当該貨物又はソ

       フトウェアが許可例外ENCに基づく適格性を有するか審査することに

       なる(許可例外ENCに基づく、暗号化品目の審査及び報告要件につい

       ては§740.17を参照のこと)。もし、審査要件を満たしていなければ、

       BISは何の措置もとらず本節(b)(2)の条項に基づき輸出し及び再輸出

       する貴方の資格を停止し、審査要請を返却する権利を保留している。

   (B)政府及び非政府最終需要者への輸出及び再輸出

   (訳者注:本(B)節の訳文中@A・・・及び『 』は理解し易いように

        訳者が追加したものである。)

    @完全に記入された審査要請書をBISが登録次第直ちに(”登録”は

    EARの§750.4(a)(2)に定義されている)、ECCN 5A992及び5D992に属

    する64ビットを超える大量販売用暗号化貨物及びソフトウェアを、許

    可なしに(NLR:許可不要)EARの740章、補足No.3に一覧

    表示された国『(許可例外ENCカントリーグループ23ヶ国)』に居住する政府及び

    非政府最終需要者へ輸出又は再輸出できる。Aなおかつ、これらの大量

    販売用暗号化製品を、許可なしに(NLR)大部分の仕向け地に(規制

    理由ATののために、又はEARの他の項に記述された理由のために許

    可を要するものを除く)輸出又は再輸出できる。但し、その用途がカナ

    ダに或いはEARの740章、補足No.3に一覧表示された国に 『本

    拠を構える企業、団体及び政府の外国にある子会社若しくは事務所の内

    部』で使用する場合に限る。BBISが貴方の審査要請書を登録してか

    ら30日で、これらの大量販売用暗号化製品を許可なしに、EARの

    740章、補足No.3に『一覧表示された国以外の大部分の仕向け地』

    に居住する政府及び非政府の最終需要者へ輸出し又は再輸出できる(一

    定の仕向け地及び個人は、規制理由ATにより又はEARのその他の項

    に記載された理由により許可を要する)。但し、別途BISにより通知

    された場合はこの限りでない(例えば、裏付け文書が見当たらない或い

       はそれが不完全である、若しくは許可例外ENC審査へ切換えるという

    理由で)。この30日には当該審査要請が処置なく一時保留となった時

    間を含めないこと。それが暗号化品目に適用される時は、EARの

    §772.1の”政府最終需要者”の定義を参照のこと。

 (3)届け出及び審査要件の除外

   下記の品目及び取引は輸出又は再輸出に先立つ届け出或いは審査を要しな

   い。しかしながら、これらの品目を一定の仕向け地に輸出又は再輸出する

   時は、規制理由ATにより若しくはEARのその他の項に記述された理由

   により(例えば、通商禁止)許可を要する。

   (@)合衆国の子会社向け暗号化品目

    合衆国の会社の外国にある子会社(EARの§772.1に定義されたところ

    の)へ、EARのその他の項で禁止されていない、新製品開発を含む何

    らかの最終需要のために輸出される ECCN 5A992,5D992又は5E992に基づ

    き規制される暗号化品目。本節に基づき輸出された暗号化貨物、ソフト

    ウェア及び技術を用いて合衆国の子会社により生産され又は開発された

    全ての品目はEARの規制を受け、かつ合衆国の会社の範囲外に販売若

    しくは再移転するに先立つ審査及び認可を必要とする。

   (A)大量販売用短距離ワイヤレス貨物又はソフトウェア

    通商管理リストのカテゴリー5(電気通信及び”情報セキュリティ”)

    に基づき別途規制されない大量販売用貨物又はソフトウェアであるが、

       それらが短距離ワイヤレス暗号化機能を備える部分品又はソフトウェア

       を組込んだ場合に限り ECCN 5A992又は5D992に基づき規制されるもの

      (例えば、100メートルを超えない公称動作範囲を有するワイヤレス

        製品)。

   (B)限定された暗号機能を有する品目

    ECCN 5A992,5D992,又は5E992に基づき規制される暗号化品目であって、

    暗号手法の使用がEARに基づく規制理由”EI”により規制されない

    暗号機能に限定されるもの(例えば、暗号機能がユーザ識別若しくはデ

       ジタル署名に限定された品目、コピー防止されたソフトウェアを実行す

       る機能、及び銀行業務又は金融決済業務のために特別に設計され、限定

    された”財務特定”品目)。これらの品目は通商管理リスト(EARの

       774章、補足No.1)上の ECCN 5A002に属する「関連する規制」及

       び「技術的な注釈」に記述されており、さらにそれらはECCN 5D002と

       5E002の下に他箇所参照を付されている。

 (4)暗号機能を作動させ又は動作可能にする貨物及びソフトウェア

   別途動作しない状態にしてある暗号化製品の暗号機能を、最終需要者が作

   動させ、或いは動作可能にすることを可能にする貨物、ソフトウェア、及

   び部分品は、作動した暗号化製品の機能に応じて規制される。本項の(b)節

   に列挙された届け出及び審査要件は、ECCN 5A992及び5D992に基づき規制さ

   れる暗号化製品の暗号機能を作動させる貨物、ソフトウェア及び部分品に

   適用される。(ECCN 5A002及び5D002に基づき規制される暗号化製品の暗号

   機能を動作可能にする貨物、ソフトウェア及び部分品に対する審査及び報

   告要件については、EARの§740.17を参照のこと)本節(b)(4)は作動済

   みの暗号化製品の輸出又は再輸出に権限を付与するものではない。動作可

   能にされた暗号化製品については、これとは別に審査又は認可が必要とさ

   れる。

 (5)大量販売用暗号化製品の例

   通商管理リストのカテゴリー5、パート2の暗号処理注(注3)の要件を

   満たすことを条件として、大量販売用暗号化製品は、これに限定するもの

   ではないが、以下の装置等のために設計され、それとセツトにされ、若し

   くは予め装備された汎用オペレーティングシステム及びデスクトップアプ

   リケーション(例えば、E-メール,ブラウザ,ゲーム,文書処理,データベース,財務のアプ

   リケーション,又はユーティリティ)を含む。それらの装置等は、

    @単一CPUのコンピュータ,ラップトップコンピュータ,携帯用の装置;

    Aクライアント インターネット器具及びクライアント ワイヤレス LAN 装置用の貨物及びソフトウェア;

    B家庭用のネットワーク貨物及びソフトウェア(例えば、PC用のパーソナル ファイヤウオール,ケー

     ブル モデム及び消費者用のセット トップボックス);

    C民生用のポータブル又はモバイル 電気通信貨物及びソフトウェア(例えば、パーソナ

     ル データ アシスタント(PDAs),ラジオ,又はセルラー方式の製品);及び

    D無料の又は匿名のダウンロード経由で輸入された貨物及びソフトウェア。

                                 以上



[訳者補足]

 1.暗号化許可協定(Encryption Licensing Arrangements)の定義

    §772.1より

  「明記された仕向け地へ明記された製品を量的制限なしに輸出することを

   可能にする許可を言う。一定の場合において、明記された最終需要のた

   めの明記された最終需要者への輸出が制限される。通常、明記された製

   品の全ての販売報告を6ヶ月間隔でするよう要求される。これには、暗

   号化品目について前に国務省により発布された流通協定及び流通と倉庫

   に関する同意に基づき成された販売を含む。」

 2.登録("registration")の定義

      §750.4(a)(2)より

   正しく完全に記入された許可申請書は、BISが受取り次第迅速に登録

   される。「”登録 ”は、当該申請がBISの電子的許可処理システムに

   入力された時点と定義される。」