海外利用決定手続きと基準 §768.1 「序 言」 本章で、輸出管理規則(EAR)の参照は15 CFR 第Z章、副章Cによる。 (a)典拠 輸出管理法(EAA)の項5(f)及び5(h)に準拠し、輸出管理担当商務次官は、 長官が海外利用を決定するために必要なあらゆる証拠を収集し、分析するに 際し、産業安全保障局(BIS)を指揮する。 (b)適用範囲 本章は、品目が国家安全保障目的のために規制される範囲に限り適用される。 本章は、以前は米国軍需品リストで規制されていたが、通商管理リスト(CCL) に移された暗号化品目であって、1996年11月15日の大統領令13026(61 FR 58767)に一致し、又同日の大統領覚書に準拠するものには適用しない。しか し、これが規定の海外利用再審査手続きに何ら影響を及ぼすことはない。 (c)制度の種類 海外利用には二通りの一般的な制度がある。 (1)規制国向け海外利用 この範疇には、拒絶された許可の査定(本章の§768.4(b)及び768.7を参照) 及び統制解除査定(本章の§768.4(c)及び768.7を参照)がある。 (2)非規制国向け海外利用 この範疇には、拒絶された許可の査定、統制解除査定、及び迅速化された 許可の適格性評価(本章の768.8を参照)がある。 (d)定義 本768章で使用される術語の定義を以下に示す。 申立て ’海外利用提示案’を参照 査定 査定基準、BISが収集したデータ、及び国防省、国務省、その他関連する 省や機関、TAC委員会、産業界から提出されたデータ及び勧告に基づき提 起された品目の海外利用に関する、BISが執り行う証拠に関する分析をい う。 査定基準 長官が海外利用に関する決定をするために査定されなければならない法律で 制定された基準をいう。これらには、実際に利用できる、米国以外の供給源 利用、規制を無効にする充分な量あり、及び匹敵する品質を有するがある。 (本章の§768.6を参照) 実際に利用できる もし、それがその国内で生産され、若しくはそれが第三国経由で当該国にお いて取得できるならば、その品目はその国で’実際に利用できる’という。 通常、その品目が米国と協力して当該品目の輸出規制を維持している国から 認可された国家安全保障許可、若しくはこれに匹敵する承認を受けた場合に 限り利用できるならば、当該品目は非規制国で’実際に利用できる’と見な さない。 請求者 ’海外利用提示案’を作成した一切の当事者、但し、TACsを除く。 匹敵する品質 もし、それが当該品目について通商管理リスト(CCL)に明記された特性を有し、 かつ、これに限定するものではないが次のものを含むキーとなる特性が良く 似ているならば、当該品目はEARに基づき規制される品目に’匹敵する品 質’を有するという。 (1)機能 (2)技術的な解決法 (3)動作閾値 (4)保守性と耐用年数 (5)それ故に規制が掛けられた用途に関連するその他属性 規制国 アルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシー、ブルガリア、カンボジア、キューバ、エストニァ、ジョージア、 カザフスタン、キルギスタン、ラオス、ラトビア、リトアニア、モルドバア、モンゴリア、北朝鮮、ルーマニア、ロシア、タジキ スタン、トルクメニスタン、ウクライナ、ウズベキスタン、ヴェトナム及び中華人民共和国 統制解除 EARに基づく許可要件の除去(自由化)をいう。 統制解除査定 統制解除(自由化)をして良いかどうか決定するための、当該品目の一国若 しくは複数国向け海外利用の査定をいう。前述の査定は、BISが海外利用 提示案又はTAC証明を受領した後、若しくは長官自身の発議により執り行 われる。 拒絶された許可の査定 BISが拒絶し、或いは許可を拒絶する趣旨の書簡を出している品目(又は 複数の品目)について、請求者からの海外利用申立ての結果として行われる 海外利用査定をいう。もし、長官が海外利用は実在すると決定するならば、 BISは申立書における品目、国、及び量に限り許可・承認することになる。 決定 EAAにおける意味での海外利用が実在するか、しないかの長官による裁決 をいう。(本章の§768.7を参照) 迅速化された許可手続きの適格性評価 当該品目が迅速化された許可手続きに適格かどうかを決定する目的で、 BISが開始する評価をいう。(本章の§768.8を参照) 迅速化された許可手続き 迅速化された許可手続きに基づき、BISが非規制国向け適格品目の輸出許 可申請を法律で定められた期間内に再審査し処置することをいう。BISが 法律で定められた期間内に拒絶しない限り、許可は承認されたものと見なさ れる(本章の§768.8を参照)。 海外利用提示案(FAS) 合理的な証拠に裏付けられ、請求者が作成しBISに提出したところの海外 利用の申立てをいう。 品目 一切の貨物、ソフトウェア、又は技術をいう。 非規制国向け迅速化された許可手続き適格品目 本768章補足No.2に記述された品目が迅速化された許可手続き適格品目で ある(本章の§768.8を参照)。 国家安全保障優先権(NSO) EAAに基づき決定されたところのその海外利用にも係わらず、当該品目に 関する輸出規制を維持せんとする大統領裁決をいう。大統領裁決は、規制が なくなれば米国の国家安全保障に不利益をもたらすことが明らかであるとの 彼又は彼女の決定に基づき行われる。一度大統領が係る裁決をなした時は、 大統領は海外利用の供給源となっている政府と海外利用除去のための交渉を 積極的に遂行しなければならない。 非規制国 本節で規制国と定義されていない全ての国をいう。 米国以外の供給源/海外供給源 米国の管轄権外に居住する者をいう(EARの772章に定義の通り)。 合理的な証拠 信用できる関連情報 信頼できる証拠 信用でき、かつ信憑性のある関連情報 長官 本章で使用する長官とは、商務長官或いは彼又は彼女の被指名者をいう。 (訳者注:上記に準じ次官とは商務次官をいう) 類似する品質 もし、当該品目について次のものを含むキーとなる特性が、但しこれに限定 するものではないが、EARに基づき規制される品目に実質的に良く似てい るならば、当該品目はそれに’類似する品質’を有するという。 (1)機能 (2)技術的な解決法 (3)動作閾値 (4)保守性と耐用年数 (5)それ故に規制が掛けられた用途に関連するその他属性 充分な量 米国の輸出規制、或いは問題の拒絶された許可がその目的を達する点で、無 効になってしまう程の当該品目の量をいう。規制国については、規制国向け の当該品目の米国からの輸出がその国の軍事的潜在力に重要な寄与をしない ように定めた、その国の軍事的ニーズに応じた量以上の量をいう。 技術顧問委員会(TAC) EAAの項 5(h)に基づき創設された委員会であって、商務長官、国防長官、 及びその他の省、機関、又は、大統領がEAAに基づき規制品目の特定地域 に関連する輸出規制案件に関し権限を委任する米国政府の職員に助言し及び 支援するものをいう。 TAC証明 TACがBISに提出する陳述であって、TACの技術的鑑定分野に入る品 目について、規制国向け海外利用が実在する合理的な証拠に裏付けられ、 FASにおけるのと同様に証明されたものをいう。 §768.2 「記述された海外利用」 (a)海外利用 当該品目は、米国の国家安全保障輸出規制を受ける品目に品質において匹敵 する、又、その国で実際に利用できる、米国以外の供給源利用、当該品目の 米国輸出規制又は許可の拒絶を無効にする充分な量がある、と長官が決定し た時に海外利用が実在することになる。規制国については、前述の規制の維 持又は特定の許可の拒絶をしても、規制国或いは米国の国家安全保障に不利 益な国々の連合体の軍事的潜在力に重要な寄与をなす品目の利用を制限でき ない時に、前述の規制又は拒絶は”無効”であるという(EAAの項 5(a) 及び3(2)(A)を参照)。 (b)海外利用の種類 海外利用には二種類ある。 (1)規制国向け海外利用 及び (2)非規制国向け海外利用 [本節(b)の注]:海外利用査定手続きの記述については本章§768.7を、又海 外利用の決定に使用される基準については本章768.6を参照。 §768.3 「海外利用査定」 (a)海外利用査定 海外利用査定は、BISが査定基準に従って提起された品目の海外利用を査 定するために執り行う証拠に関する分析であって、請求者より提出されたデ ータ、BISにより収集されたデータ、及び、国防及び国務省及びその他の 関連する省及び機関、TAC委員会、及び産業界より提出された勧告に基づ く。BISは、長官へのその勧告策定時に行われた、提起された品目につい ての海外利用の実在有無に関する分析の諸結果を使用する。もし、長官が海 外利用は実在すると決定するならば、長官は当該品目の国家安全保障理由に よる統制を解除するか、或いは問題の許可を拒絶すべき海外政策理由がなけ れば、その許可を承認する。但し、大統領が国家安全保障優先権を行使しな い場合に限る(本章§768.7を参照)。本章では、前述の決定による海外規制 政策の有効性に及ぼす効果を問わないものとする。 (b)査定の種類 海外利用査定には二種類ある。 (1)拒絶された許可の査定 及び (2)統制解除査定 (c)迅速化された許可手続き 迅速化された許可手続きに対する品目の適格性評価については、本章§768.8 を参照のこと。 §768.4 「査定の開始」 (a)査定の要求 査定を開始するためには、各請求者又はTACがFAS又はTAC証明を BISに提出しなければならない。TACsは規制国向けに限り海外利用を 証明する権限を与えられている。請求者は規制国向け又は非規制国向けのど ちらでも海外利用を申し立てることができる。 (b)拒絶された許可の査定 BISがその許可申請を拒絶している、或いはそれについて国家安全保障を 根拠とする許可拒絶の趣旨の書簡が発行されている請求者は、許可拒絶後 90日以内に海外利用提示案(FAS)を提出して、BISが拒絶された 許可の査定を開始するよう要求できる。その提示案の一部として、請求者は 明記された許可申請が海外利用を根拠に承認されるべき旨要求しなければな らない。 証拠は許可申請書に記述されたところの個別の輸出及び申立てられた匹敵す る品目に関連付けなければならない。もし、海外利用が認められるならば、 長官は申請書に掲載された特定の品目、国、及び量に対する許可を承認する。 拒絶された許可の査定手続きは、しかしながら、ある国への供給量の増加が みんな合わせると当該品目の充分な量となってしまい、当該品目に関する米 国の輸出規制の除去に帰することを意図するものではない。もし、前述の許 可承認、それ自体がその目的の達成において米国の輸出規制を無効にするな らば、長官は海外利用を根拠として、拒絶された許可を承認することはない。 肯定的な決定の場合には、長官は統制解除査定をして良いかどうかを決定す ることになる。もし、そうならばその時BISは統制解除査定を開始する。 (c)統制解除査定 (1)如何なる請求者も、何時でも、如何なる国又は国々向け海外利用を申立て るBIS宛FASにより、BISが統制解除査定を開始するよう要求でき る。 (2)TACは、TACの技術的鑑定分野に入る品目について、規制国向け海外 利用がある旨のTAC証明をBISに提出することにより、BISが何時 でも統制解除査定を開始するよう要求できる。 (3)長官は、彼又は彼女自身の発議に基づき統制解除査定を開始できる。 (d)BIS宛の郵送先住所 全ての海外利用提示案及びTAC証明は下記のところに提出されなければな らない。 商務省,産業安全保障局,3877号室 ワシントン,DC20230,NW,ペンシルバニア大通り,第14番街 §768.5 「海外利用提示案及び技術顧問委員会証明の内容」 (a)全ての海外利用提示案は、海外の供給源から利用できる旨申立てた製品又は 技術の情報に加え、少なくとも次の事項を含まなければならない。 (1)請求者氏名 (2)請求者の郵送先及び勤め先住所 (3)請求者の電話番号 (4)連絡先及び電話番号 (b)海外利用提示案及びTAC証明には、これに限定するものではないが、下記 の事項を包含し、その請求を裏付けるのに役立つ出来るだけ多くの証拠を含 まなければならない。 (1)匹敵する旨申立てた品目の製品名及び型式名称 (2)匹敵する旨申立てた品目の米国技術に基づく範囲 (3)米国以外の供給源の氏名及び住所、及び当該品目が米国以外の供給源品目 であると主張する論拠 (4)質的比較が行われるべきキーとなる動作要素、属性、特性 (5)米国以外の供給源の、匹敵する品目と申立てた生産の量及び又は売上高、 及び販売努力 (6)市場の需要見積り及び当該規制の経済的影響 (7)匹敵する旨申立てた品目に組み込まれた米国の規制部品及び部分品の製品 名、型式名称、及び価格 及び (8)海外利用が申立てられた対象国又は複数の国で当該品目が’実際に利用で きる’とする主張の論拠 (c)海外利用を裏付ける証拠は、これに限定するものではないが、下記の事項を 包含すること。 (1)海外製造者のカタログ、パンフレット、操作又は保守マニュアル (2)信頼できる通商及び技術出版物からの記事 (3)写真 (4)目撃証人報告に基づく証言録取書、 及び (5)その他の信用できる証拠 [本節(c)の注]:裏付ける証拠の例を768章補足No.1に追加しているので 参照のこと。 (d)FAS又はTAC証明を受取ると、BISはそれを再審査し海外利用が実在 すると確信できる充分な裏付け証拠があるかどうかを決定する。もし、BI SがそのFAS又はTAC証明は裏付け証拠に欠けると決定するならば、B ISは追加の証拠を請求者若しくはTACを含む適切な関係筋に要請する。 それが海外利用が実在する充分な証拠を有すると決まると、BISは査定を 開始する。請求者及びTAC証明査定は前記決定日より開始されたものと見 なされる。 (e)請求者及びTACsがFAS及びTAC証明に包含する裏付け証拠を集める 時には、本章の§768.6に記述された海外利用査定基準、及び768章補足 No.1に記述された証拠の例を再検討するよう我々は勧める。 §768.6 「基準」 BISは、FAS若しくはTAC証明に含まれる証拠及び一定の基準に従い行 われる査定の過程で集められた全ての証拠を評価する。そして、それらの証拠は BISが長官に肯定的な決定を勧める前に、一つに纏められていなければならな い。基準は本章の§768.1(d)に定義されている。査定を開始するために、各 FAS及びTAC証明はこれらの基準の各々に対応していなければならない。基 準は法律で規定され、それらは次の通りである。 (a)実際に利用できる (b)米国以外の供給源 (c)充分な量、 及び (d)匹敵する品質 §768.7 「手続き」 (a)査定の開始 (1)BISが海外利用のFAS又はTAC証明を一旦受取れば、その後BIS は査定が開始されたことを請求者又はTACに通知する。 (2)BISは如何なる査定開始の告示も官報に公表する。 (3)BISは国防及び国務省、諜報機関、及びBISが査定を開始している当 該品目に係わる情報を有するその他全ての省、機関及びこれらの契約者に 通知する。前述の各省、機関、及び契約者は当該品目に係わる全ての関連 情報をBISに提供しなければならない。BISは関係する省や機関が査 定過程に参加するよう求める(本節(e)を参照)。 (b)データの収集 BISは、これに限定するものではないが本章の§768.5(b)及び(c)に記述さ れた証拠を含めて、海外利用の存在又は不在に関係する全ての有用な情報を 探求し考察する。BISが査定を開始するや否や、選択された国若しくは国 々の軍事的ニーズの分析、技術的な分析、及び国防及び国務省、及びその他 米国の機関からの秘密情報を含めて、査定関連証拠が探求される。証拠はと りわけ次のものから探し求められる。それは、世界的な産業筋;その他の米 国組織;外国の政府;商業、学術及び機密データベース;科学及び工業の研 究・開発組織;及び国際見本市である。 (c)分析 BISは、海外利用基準の各々に関連する合理的で信頼性のある証拠が、海 外利用が実在し若しくは実在しない旨の決定を勧めるに足る充分な論拠を提 供するかどうかを評価することにより、その分析を執り行う。 (d)勧告及び決定 (1)各査定が完結すると、BISはその分析結果を論拠として、証拠が裏付け るところがどちらであれ、海外利用があるか又はないか、どちらかを長官 が決定するよう勧告する。BISはその勧告の基礎となる査定を行った後、 長官への勧告を実施する。 (2)BISは、匹敵する品質の品目がその国で ’実際に利用できる’、米国以 外の供給源利用、充分な量であるので、現存する国家安全保障輸出規制の 継続、又は国家安全保障を根拠とする問題の許可申請の拒絶がもはやその 目的達成において無効となっていることを証明する有用な証拠がある時は、 長官が海外利用がその国で実在する旨、その分析結果を論拠として決定す るよう勧告する。規制国については、前述の規制又は拒絶は次の場合に ”無効”となる。それは、匹敵する品目が米国以外の供給源から充分な量 ’実際に利用できる’ので、前述の規制の維持又は許可の拒絶が、如何な る国又は米国の国家安全保障に不利益な国々の連合体の軍事的潜在力に重 要な寄与をなす品目の利用の制限に効果的でなくなった時である。 (3)長官はBISの査定及び勧告に基づき海外利用の決定をする。長官の決定 はBISに提供された証拠、国防及び国務長官及びその他関係する機関の 長の勧告、及び長官が関連すると見なすその他一切の情報を考慮して行わ れる。 (4)FASにより開始された全ての統制解除及び拒絶された許可の査定(EA Aの項5(f)(3)に基づく)については、長官は査定の開始後4ヶ月以内に 決定し、請求者に通知する。長官は適切な省及び機関に再審査のための肯 定的な決定を提出する。 (5)自己発議及びTAC発議査定に基づく決定の最終期限は、請求者発議査定 の最終期限とは異なる(本節(f)(2)及び(f)(3)を参照)。 (e)諸機関間の再審査 BISは査定の開始に関し、全ての適当な米国機関に通知し、査定の過程に 参加するよう求める。BISは全ての関係する機関及び省に、元資料、分析 結果草案及び査定結果草案を受領若しくは作成後直ちに、それらを再審査で きる機会を提供する。請求者発議査定については、BISは、長官の海外利 用決定を受けて関係機関及び省に彼等の再審査のために全ての肯定的な勧告 及び査定の写しを提供する。自己発議及びTAC発議査定については、BI Sは全ての関係する機関に査定結果について再審査し、意見を述べる機会を 提供する。 (訳者注:本節(d)(e)における肯定的な決定/勧告の原文は、positive determinations/positive recommendations である。§768.9の negative determinations との対比から positive を'肯定的な' と訳した。このことから、商務長官が否定的な決定をした場合は 諸機関の再審査の対象とならないものと思われる。尚、§768.4 (b)及び768.6においても同様とする。) (f)通知 (1)FASに基づく査定の開始後5ヶ月を超えない内に(請求者発議査定)、 長官は請求者に文書で報知し、下記の告示を官報に公表・提示する。 (@)海外利用が実在し、かつ (A)許可要求が除去されているか、若しくは問題の許可申請は承認されて いること、或いは (B)海外利用の実在にも係わらず、大統領が、国家安全保障目的のために 当該輸出規制は維持されなければならないこと、或いは当該許可申請 は拒絶されねばならないことを決定し、かつその海外利用を除外する ための適切な処置が開始されつつある旨の決定がなされていること、 或いは (C)先のCOCOM体制下で多面的規制されていた品目の場合、米国政府 は提起された統制解除又は旧COCOM体制下での許可承認に係わる 一切の必要な協議を、官報に決定の公表日から4ヶ月迄の期間執り行 うこと(米国政府は旧COCOM体制下の再審査過程で未決の非規制 国向け輸出の許可要求を除去できる)、 或いは (A)海外利用は実在しないこと。 (2)全てのTAC証明査定については、長官は査定開始後90日以内に海外利 用決定をする。BISはTAC向け及び議会向けの報告書を作成し、提出 して次のことを述べる。 (@)長官は海外利用ありと認め、かつ許可要求を除去している、 或いは (A)長官は海外利用ありと認めているが、当該海外利用を除外する 交渉に取り掛かられるよう大統領に勧告している、 或いは (B)長官は海外利用ありと認めていない。 (3)長官による自己発議査定の、又はその結果としての決定のための、法定最 終期限は存在しない。しかしながら、BISは前述の査定及び決定を敏速 に完結するようあらゆる努力をする。 (g)規制国向け海外利用 規制理由が国家安全保障で規制される品目が規制国で利用されていると長官 が決定し、かつ大統領が国家安全保障優先権(NSO)を発していない時、 BISは当該品目の多面的統制解除、若しくは旧COCOM体制でのその許 可・承認、についての提案草稿を添えてその決定を国務省に提出する。国務 省は旧COCOM体制での再審査についての提案書若しくは許可書を提出す る。旧COCOM体制なら提案書の再審査に4ヶ月を限度とする期間迄かか ったであろう。 (h)非規制国向け海外利用 もし、非規制国向け海外利用が実在すると長官が決定するならば、大統領が 国家安全保障優先権を行使しない限り、長官はそれがそこで利用できると認 められる全ての非規制国向け輸出について当該品目の規制解除をするか、或 いは問題の許可を承認する。 (i)海外利用を除外するための交渉 (1)大統領は海外利用の実在にも係わらず、輸出規制が維持されなければなら ないと決定できる。係る決定は国家安全保障優先権(NSO)と呼ばれ、 規制が無くなれば米国の国家安全保障に不利益となるとの大統領決裁に基 づいている。延長されない限り(本節の(i)(7)に記述された如く)、NS Oは6ヶ月間有効である。大統領がNSOを援用している間、米国政府は 供給源となっている国の政府と6ヶ月の期間中、海外利用を除去するよう 交渉を積極的に遂行する。 (2)国家安全保障優先権には二種類ある。 (@)EAAの項5(f)に従い開始された査定に由来する海外利用決定のNSO (請求者及び自己発議査定)、 及び (A)EAAの項5(h)に従い開始された査定に由来する海外利用決定のNSO (TAC発議査定)。 (3)EAAの項5(f)に基づき開始された査定に由来するNSOについては、ど の機関の長官も、海外利用が認められたにも係わらず、大統領が規制を保 持し、若しくは許可を拒絶するためのEAAに基づく権限を行使するよう 勧告できる。 (4)EAAの項5(h)に基づき開始された査定に由来するNSOについては、商 務長官は、海外利用が認められたにも係わらず、大統領が規制を保持する ためのEAAに基づく権限を行使するよう勧告できる。 (5)EAAの項5(f)に基づき開始された査定に由来するNSOを受けて、上院 の銀行業、建設業、及び都市問題の各委員会及び下院の国際関係委員会に 要求される交渉の開始が正式に通知される。通知には規制保持を必要とす る国家安全保障問題の説明が含まれる。 (6)EAAの項5(f)に基づき開始された査定に由来するNSOを受けて、BI Sは次のものから成る告示を官報に公表する。 (@)長官の海外利用決定 (A)大統領のNSO行使の裁決 (B)大統領裁決の論拠を示す簡明な声明書、及び (C)裁決による経済的影響の見積り。 (7)もし、6ヶ月の期限切れ前に、大統領が交渉は前進中であることを議会に 保証し、かつ規制がなくなれば依然として米国の安全保障に不利益となる と決定するならば、NSOの有効期限6ヶ月は更に12ヶ月迄追加延長で きる。 (8)交渉の終結後、BISは海外利用が除外された範囲に限り規制を保持する。 もし、海外利用が除外されないならば、BISは査定に含まれている仕向 け地向け当該品目の輸出許可要求を除去し、当該品目の統制解除を行う。 交渉が上手く行って海外利用が除外された範囲で、BISは海外利用除外 に同意している国向け当該品目の輸出許可要求を除去する。 (j)海外利用に生じた変化 もし、海外利用が実在するか、又はしないかの前の決定に影響する新証拠を 含む、諸条件にBISが気付くならば、BISはその条件を再審査できる。 もし、BISが前に決定された海外利用がもはや実在しないか、若しくは以 前認められなかった海外利用が現在実在していることを認めるならば、BI Sは商務長官に適切な規制変更を勧告する。商務長官は決定をし、そして BISが決定の官報告示を公表する。 (次項へ続く) [訳者補足]統制解除(decontrol)と許可要求の除去(remove the license requirement)について 1.統制解除(decontrol) §768.1(d)において、「EARに基づく許可要件の除去」と定義されてい る。これは許可制から自由化への変更を意味する。 ところで上記定義の英文は、Removal of license requirements となって おり、次項の許可要求に比較し定冠詞がなく、又複数であることに注意を 要する。 2.許可要求の除去(remove the license requirement) §768.7(i)(8)では次の如く使用されている。 BIS will decontrol the item by removing the requirement for a license ----- 許可要求を除去して当該品目を統制解除する---と訳す。その意味はBISが 当該品目を自由化し、----に関する当該品目の許可要求を却下することで ある。(尚、remove には、解除する、解消するetcの意味もある。) 3.NSOとBISの手続き §768.7(i)(8)に記述された手続きは難解なので、その解釈を以下に纏めた。 @大統領がNSOを行使している場合に、米国政府はそれ(海外利用)をなく す(除外する)ようその有効期間中は相手国政府と積極的に交渉しなけ ればならない(§768.7(i)(1))。 Aそこでは(有効期間中は)交渉の成否に係わらず、NSOがEARに優先して 実施されるのは自明である。 Bしかし、BISはこの期間中にも許可要求を処置しなければならない。 §768.7(i)(8)はその処置等を定めたものであって、次の3項目から成る。 イ.交渉が決着した場合(除外の可否を問わない); 除外された範囲に限り規制を保持する。 ロ.除外されていなければ、査定に含まれている仕向け地向け当該品 目の輸出許可要求を却下して、当該品目の統制解除を行う。 ハ.除外された範囲で、除外に同意している国向けの当該品目の輸出 許可要求を却下する。 (注)ロ、ハ共に輸出許可要求を却下するのはAから当然である。 イとロは規制の有無からすると相反する。しかし、BISはEARに基 づき規制の可否を決定するので、ロのように除外されず海外利用 が実在すれば統制解除するのは理解できる。また、反対にイのよ うに除外され実在しなければ、規制を保持するのも当然と考えら れる。 以上