補完的輸出規制の概要 [注意]2002.4.1より改正施行される。本ホームページ1.3(3)「キャッチオール規制 への改正点」を参照のこと(2002.3.15)。 大量破壊兵器(核兵器、化学兵器及び生物兵器)関連貨物・技術の拡 散防止は輸出規制の重要課題である。1991年の湾岸戦争を契機に、 所謂戦略物資に該当しない貨物・技術の大量破壊兵器への転用の懸念 が高まり、転用のおそれのある貨物・技術の規制、即ち補完的輸出規 制が実施されることとなった。ここで、その概要を纏めた。 1.補完的輸出規制に関する法令等の仕組み (1)我が国の輸出規制は、外国為替及び外国貿易法第25条及び第48条に基 づき実施されている。補完的輸出規制も同法の下で行なわれ、対象貨物・技 術が輸出令別表第1の16の項及び外為令別表の16の項に規定されている。 ところで、前記16の項の貨物・技術については、「該当」の場合でも大量 破壊兵器等への転用のおそれがある場合(注1)に該当しなければ、経済産 業大臣の許可を要しない。但し、それが(併せて)1から15の項のいずれ かに「該当」する場合は許可を要する。 (2)仕向け地が、不拡散政策を遵守しているとされる輸出令別表第4の2の地 域(注2)の場合は、前記のおそれがある場合に該当しても許可を要しない。 但し、おそれがあるものとして経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通 知を受けた場合を除く。 (輸出令第4条第四号及び省令第8号第9条第1項第四号) (3)なお、「おそれ」がない輸出等を行なおうとする者がおそれがある場合に 規定する開発等のために用いられることとなることを「知った」場合には、 遅滞なくその旨を経済産業大臣に報告しなければならない。(8貿第248号) (仕向け地が、輸出令別表第4の2の地域の場合を含む。) (4)おそれがある場合を定める通達等(確認の方法を含む)は次のようになっ ている。 貨物の場合:輸出貨物が核兵器等の開発等に用いられるおそれがある場合 を定める省令(省令第16号)→化学に関する研究及び宇宙に 関する研究の規定(告示第126号) 技術の場合:提供しようとする技術が核兵器等の開発のために利用される おそれがある場合を定める件(告示第112号) 確認の方法:@輸出等に関し、入手した文書等に前記開発等に用いられる (貨物・技術) 旨、又は需要者が核兵器等の開発等を行なう、或いは行な った旨記載されている。 A輸出貨物等が@に該当する旨、輸入者、需要者等から連絡 を受けた。 上記@Aの時、おそれがある場合に該当する。輸出等に関し 入手した文書等以外に、特別な調査等を必要としない。 (5)上記により経済産業大臣の許可を要する場合は、規定の書類の他、誓約書 を添付の上、許可申請をしなければならない。(4貿局第283号) (注1)輸出令第4条第1項第四号イより その貨物が核兵器、軍用の化学製剤若しくは細菌製剤若しくはこれら の散布のための装置又はこれらを運搬することができるロケット若し くは無人航空機(「核兵器等」という。)の開発、製造、使用又は貯 蔵(「開発等」という。)のために用いられるおそれがある場合とし て省令で定める場合。 (注2)輸出令別表第4の2の地域は、アルゼンティン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、 デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、 ニュー・ジーランド、ノールウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、連合王国、アメリカ合衆国 である。 2.補完的輸出規制の許可要否判定フロー 輸出貨物等が16の項に該当する場合の許可要否判定フローを下図に示す。
(注1)「おそれ」及び「知った」は1項(1),(3)の規定による。 (注2)なお、特例(輸出令第4条)又は役務通達(4貿局第492号)の「許可を要し ない技術提供取引」が適用できる場合は、補完的輸出規制の対象外であり、 許可を要しない。 3.「おそれ」の該非判定チェックシート
項 目 | NO | 基 準 | 判 定 | |
当該貨物 の 用途確認 |
イ | その貨物の輸出に関し、その契約書又は輸出者が 入手した文書若しくは記録媒体において、当該貨物 が核兵器等の開発等のために用いられることとなる 旨記載され、若しくは記録されているか。 |
no | yes |
ロ | 当該貨物が核兵器等の開発等のために用いられる こととなる旨輸入者等(注1)から連絡を受けたか。 |
no | yes | |
需要者 の 確認 |
イ | その貨物の輸出に関し、その契約書又は輸出者が 入手した文書若しくは記録媒体において、当該貨物 の需要者が核兵器等の開発等又は別表に掲げる 行為を行なう或いは行なった旨記載され、若しくは 記録されているか。 |
no | yes |
ロ | 当該貨物の需要者が核兵器等の開発等又は別表に 掲げる行為を行なう或いは行なった旨輸入者等か ら連絡を受けたか。 |
no | yes | |
[別 紙] 下記のいずれかに「はい」がある時、上記需要者確認の該当項がyesになる。 | ||||
@核燃料物質若しくは核原料物質に関する研究 (軽水炉の運転に専ら付帯して行なわれることが明かな場合を除く) |
いいえ | はい | ||
A核融合に関する研究 (専ら天体に関するもの又は 専ら核融合炉に関するものであることが明かな場合を除く。) |
いいえ | はい | ||
B原子炉の運転 (その原子炉が発電の用に 供する軽水炉であることが明かな場合を除く。) |
いいえ | はい | ||
C重水の製造 | いいえ | はい | ||
D核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に規定 する加工及び再処理 |
いいえ | はい | ||
E化学に関する研究(注2)、微生物、毒素若しくは遺伝子に関する 研究、ロケット若しくは無人航空機に関する研究又は宇宙に関する 研究(注2)であって、軍若しくは国防に関する事務をつかさどる 行政機関が行ない、又はこれらの者から委託を受けて行なわれる ことが明かにされているもの。 |
いいえ | はい | ||
判定結果 | 上表の判定欄に一つでも「yes」があれば該当になる。 | [ ] 非該当 |
[ ] 該当 |
上表において (注1)輸入者等とは、輸入者若しくは需要者又はこれらの代理人 を言う。 (注2)告示第126号、平成8年3月26日で定めるものを除く。 (注3)上記チェックシートの技術に対する読み替え 貨物→技術、輸出/輸入→取引、輸出者→取引を行なおうとする者、 輸入者等→相手方等、需要者→当該技術を利用する者。 4.まとめ (1)対象貨物・技術 対象品目(16の項)は貨物が87品目、技術は前記貨物の設計、製造又は 使用に係る技術であって、省令で定めるものとなっている。 16の項は、省令で定める仕様限界値が1〜15の項に比し大変低い。 一例として、(82)電子計算機の仕様をみると次のようになっている。 電子計算機であって、次のいずれかに該当するもの イ 回路の物理的変更手段以外の手段により、プログラムを変更するこ とができるもの ロ 回路の物理的変更手段以外の手段により、プログラムを変更するこ とができないものであって、ロケット搭載用に専用設計されたもの (2)許可の要否 上記の如く、対象品目も多く又仕様限界値も低いので、全ての貨物・技術 を対象とみなし、一応、許可の要否を「おそれ」の該非により決める。 次に、そこで該当になれば16の項の該非等を判定し、最終的に許可の 要否を決定する。このようにすれば、効率良く許可要否を決定でき、かつ 許可申請漏れ防止に役立つと考える。 (以上のことから、補完的輸出規制の本質は需要者・用途確認と言える。) (3)2項の許可要否判定フローに示す如く、「おそれ」がない輸出等を行なお うとする者が「おそれ」があることとなることを知った時は、許可申請の 要否の如何に係らず、遅滞なく経済産業大臣に報告しなければならない。 この「知った」と言う言葉から補完的輸出規制のことをKNOW 規制と呼ぶ ことがある。(報告義務が免除される期限等の記載はない。) 以上