EARの許可例外の抄訳 EARの740章、許可例外の抄訳。§740.1,2の序言及び全ての許可例 外に関する制限については全訳とし、各許可例外についてはその適用範囲 の概要を一覧表に纏めた。実際の案件については、原文を良く読み適切に 対処のこと。 1.序言(§740.1) 本章で、EARの参照は15 CFR 第Z章、副章Cによる。 (a)適用範囲 ”許可例外”は、それがなかったら、一般禁止事項第一、ニ又は三に基づ き、EAR774章の補足No.1の通商管理リスト(CCL)における一 以上の輸出管理分類番号(ECCNs)に示される通り、許可を要する輸出 管理規則(EAR)関連品目を、そこに述べられた条件下で輸出若しくは再 輸出することを許可する、この章に含まれる承認である。その輸出若しくは 再輸出が、一般禁止事項第六の通商禁止・仕向け地向けならば、どんな許可 例外であれ、適用可否決定のためにEARの746章を参照せよ。特別な貨 物規制が供給不足品目に適用される。規制理由が供給不足としてCCL上に 記載された品目に対する許可例外は、EARの754章による。その輸出若 しくは再輸出が、一般禁止事項第五に当たるならば、EARの744章を見 よ。その輸出若しくは再輸出が、一般禁止事項第四、七、八、九、又は十に 当たるならば、その時は許可例外を適用できない。 (b)保証 如何なる許可例外でも使用すれば、EARに記述された許可例外の使用に関 する約定、条項、及び条件を満たしていることを保証したものと見なされる。 積出しの通関手続き及び許可例外使用の証明方法については、EARの 758章を参照下さい。 (c)許可例外の記号 各許可例外は、輸出通関手続きのために用いられる三文字の記号を持ってい る(本節の(d)を参照)。 (d)荷送り人の輸出申告書 許可例外に基づき輸出された全ての積荷について、提出すべき荷送り人の輸 出申告書(SED)又は自動輸出システム(AES)記録に、正しい許可例外の記号 (例えば、LVS,GBS,CIV)及び正確な輸出管理分類番号(ECCN) (例えば、4A003,5A002)を記載しなければならない。米国に一 時的にあり、許可例外TMPの§740.9(b)(3)の条項を満たす品目について は、上記要件が除外される。荷送り人の輸出申告書要件については、EAR の§758.1を、又自動輸出システム(AES)要件については、EARの§758.2 を参照のこと。 (e)用途規制文 EARの§758.6の「用途規制文」要件に従い、商用文書に適切な「用途規 制文」を記載する必要がある。 (f)記録の保持 あらゆる許可例外に基づく、輸出に伴う記録がEARの762章の記録保持要 件に従い保存されなければならない。 2.全ての許可例外に関する制限(§740.2) (a)下記の一つ以上に当てはまるならば、如何なる許可例外も使用してはな らない。 (1)許可例外を使用するための承認が、一時停止され或いは取消されている。 又は、しようとしている輸出が許可例外の対象にならない場合。 (2)輸出若しくは再輸出が一般禁止事項の一つに当てはまり、許可例外が使 えない、かつ、BXAによる承認が得られていない場合。 (3)その品目が、ECCN5A980で規制される有線又は口頭通信の盗聴用である場 合。但し、米国政府機関の者(本章の§740.11(b)(2)(A),政府(GOV)を 参照)による場合を除く。 (4)積出ししようとしている貨物が、特別に設計された犯罪管制手段でEARの §742.7に記述されている検出器又は装置であって、かつ、アイスランド、ニュー・ ジーランド、又はカントリー・グループA:1(740章の補足No.1参照)向けの積出しで ない場合。但し、その積出しが許可例外BAGで、本章の§740.14(e) (ショットガン及びショットガン弾)に基づき承認される場合を除く。 (5)その品目が、規制理由:ミサイル技術(MT)により規制される場合。 但し、ECCN 6A008,7A001,7A002,7A004,7A101,7A102,7A103,7A104,7B001, 7D001,7D002,7D003,7D101,7D102,7E003,又は7E101に記述された品目が、 §740.9(a)(2)(A)(置き換え部品一式についての許可例外TMP), §740.10(許可例外RPL),§740.13(許可例外TSU),又は §740.15(c)(船舶若しくは航空機で恒久的に使用する装置及び予備品に ついての許可例外AVS)に基づき、有人飛行体、陸上輸送体、若しく は海上輸送体の部品として輸出される場合、そうでなければ、このよう な用途の置き換え部品として量的に適切な場合を除く。 (b)あらゆる許可例外は、予告なしに、全部又は一部、改訂し、一時停止し、 或いは廃止されることがある。BXAは、例えば未承認の輸出若しくは再 輸出を防止するため、その過程の如何なる段階であれ積出し又は輸出取引 を止めさせなければならない。もし、積出しが既に終わり航海途中ならば、 なおさら、引き戻さすか寄港先で積荷を降ろすよう命じなければならない。 (c)BXAは、米国のワッセナー履行義務に従うため、輸出者に報知して許可 例外の一時停止或いは取り消しを行う。さらに加えて、BXAは、許可例 外を使用する前に、提起された輸出に関しBXAに届け出が必要なことを 当該輸出者に報知することがある。 3.許可例外の種類と適用範囲の概要(§740.3〜17) 下表に示す。ここでは、各節§の適用範囲(Scope)を基に纏めた。 但し、(以下省略)とある場合は、その項目の一部を示し全体を纏めていな い。また、この表における輸出には再輸出を含む。詳細はEAR 740.3〜17を 参照のこと。
種類(表題) |
記号 |
適用範囲の概要 |
限度価格の積出し |
LVS |
@LVS-$(限度価格)の貨物であって、その価格が限度内のもの のカントリーグループB地域への輸出。 A前記価格は、同一注文について、同じECCN番号毎に集計した ものとする。 B特定の貨物についてEARの§743.1の報告要件あり。 (以下省略) |
カントリーグループ B地域への 積出し |
GBS |
@GBS-yesの貨物であって、国家安全保障(NS)の理由で規制 されるカントリーグループB地域への輸出。 但し、その他理由により規制される場合を除く。 A特定の貨物についてEARの§743.1の報告要件あり。 |
民生の最終需 用者 |
CIV |
@CIV-yesの品目であって、国家安全保障(NS)の理由で規制 されるカントリーグループD:1(但し、北朝鮮を除く)地域の民生の 最終需用者及び需用向け輸出。 但し、その他理由により規制される場合を除く。 A最終需用者が軍関係若しくは軍用と知られているものに使用 してはならない。このような場合及び@による輸出後、軍用に 転用する場合には許可が必要。 B特定の貨物についてEARの§743.1の報告要件あり。 |
限定付き技術 及びソフトウェア |
TSR |
@TSR-yesの技術及びソフトウェアであって、国家安全保障(NS) の理由で規制される最終仕向け地がカントリーグループB地域への 輸出。但し、その他理由により規制される場合を除く。 A輸出する前に、荷受け人から再輸出、譲渡等制限に関する 保証文書を入手しなければならない。 B特定の品目についてEARの§743.1の報告要件あり。 |
コンピューター |
CTP |
@6,500Mtops超の電子計算機のコンピュータ階層1地域への輸出。 A6,500Mtops超で、85,000Mtops以下の電子計算機の一定の条 件下での、コンピュータ階層3地域への輸出。 B本許可例外は、グラフィックアクセレータ、コプロセッサー、又はミサイル技術 (MT)の理由で規制される電子計算機の輸出に適用できない。 (以下省略) |
鍵管理機構 |
KMI |
@米国政府に届け出てKMIに分類された、ECCN 5A002及び 5D002 で規制され、鍵長の如何を問わない、暗号化貨物及び ソフトウェアの輸出。 Aキューバ、リビア、北朝鮮、イラク、イラン、シリア、及びスーダンを除く全ての 仕向け地向けに適用できる。 BBXAへの報告(半年毎)要件あり。 |
一時的 輸入、 輸出、及び再 輸出 |
TMP |
(a)一時的輸出 @一定の条件に基づき、海外(公海を含む)で一時的に使用す る一定の貨物及びソフトウェアの輸出。 A本項に基づく積荷@は、戻せるようになれば直ちに、遅くとも 1年以内に輸出国に返さなければならない。但し、特に定める 場合、或いはここに定める通常使用により消費又は破壊等し た場合を除く。(以下省略) (b)米国に一時的に置かれた品目の輸出 @米国に一時的に置かれた外国原産の特定の品目の輸出。 Aこれには、米国における展示会等に出品するため輸入し、出 展拒否のため戻すもの等を含む。(以下省略) (c)ベータ・テスト版ソフトウェアの輸出 @一定の条件下で行う、ベータ・テスト版(試用版)ソフトウェアの一 般大衆向け輸出。(以下省略) |
部品及び装置の修理と交換 |
RPL |
(a)先に輸出した装置の一対一の交換部品の輸出。(以下省略) (b)米国原産の貨物及びソフトウェアであって、欠陥あり、或いは 受け取り拒否で、修理及び交換のために米国に戻された品目 の輸出。(以下省略) |
政府、国際機関、及び化学兵器協定に基づく国際査察 |
GOV |
(a)国際保障措置 @公認の国際保障措置のための、国際原子力機関(IAEA)及 びヨーロッパ原子力共同体(Euratom)向け貨物若しくはソフト ウェアの輸出。(以下省略) (b)政府 @米国政府の職員及び機関、又は協力国政府の機関向け特 定品目の輸出。(以下省略) (c)化学兵器協定(CWC又は協定)に基づく国際査察 (以下省略) |
贈与小包及び人道的寄付 |
GFT |
(a)個人(贈与者)が無償で、個人又は宗教、慈善若しくは教育機 関(受贈者)宛に送付する贈与小包の輸出。 但し、貨物の種類、価格、その他の限度条件あり。 (b)一定の条件を満たす、慈善団体又は機関による人道的支援 を目的とする特定の貨物又はソフトウェアの無償輸出。 |
限定なしの技術及びソフトウェア |
TSU |
(a)操作技術及びソフトウェア @据付、操作、保守(点検)及び修理に必要最小限の技術及び ソフトウェアの輸出。 A合法的に輸出された装置を対象とし、仕向け地を問わない。 (b)販売技術 @”販売技術”とは、品目の如何に係らず、その品目の販売、 賃貸し又はその他供給のための、未来若しくは現在の価格 表、付け値、或いは申し出を裏付けるデータである。 (以下省略) (c)ソフトウェアの更新 @合法的に輸出された最初のソフトウェアの、誤り訂正(バグ 修正)に限定した更新版の輸出。 A最初と同じ荷受け人宛に限り、また、機能拡張を含まない。 (d)”大量販売の”ソフトウェア @General Software Noteに基づく”大量販売の”ソフトウェアの 輸出。 AECCN 5D002等の暗号化ソフトウェアには適用できない。 Bキューバ、リビア、北朝鮮、イラク、イラン、シリア、及びスーダンを除く全ての 仕向け地向けに適用できる。 (e)限定なしの暗号化ソースコード @ECCN 5D002で規制される暗号ソースコードであって、公開さ れ、その製品の生産、販売等の許可料又は使用料を必要と しないものは、輸出の時までにインターネットアドレス又はソー スコードのコピーをBXAに文書で通知していれば、E I規制は 解除され、許可例外TSUに基づき、レビューなしに輸出でき る。(以下省略) |
手荷物 |
BAG |
@個人及び乗組員が、個人用手荷物として携帯する一定の貨物 及びソフトウェア A一時的に出国する個人の場合、本許可例外に基づき輸出した 品目を持ち返らなければならない。但し、海外で消費し、或いは その他EARで処分の認められているものを除く。 B別送品、ショットガン及びショットガン弾、暗号化ソフトウェア等の特別 条項あり。 |
航空機及び 船舶 |
AVS |
(a)米国に一時滞在中の外国船籍の民間航空機の出発、及び 米国民間航空機が海外に向けて一時滞在するために出発す る場合。 (b)航空機又は船舶で恒久的に使用する装置及び予備品、又は 備品の輸出。 (c)米国又はカナダ船籍の船舶若しくは飛行機、及び米国又は カナダの航空会社の基地、或いは代理人、向けの特定貨物 の輸出。 |
附随的許可の再輸出 |
APR |
(a)一定の条件を満たす、カントリーグループA:1及び協力国からの再 輸出。 (b)一定の条件を満たす、カントリーグループA:1及び協力国への又は 相互間の再輸出。 |
暗号化貨物及びソフトウェア |
ENC |
@5A002,5D002及び5E002に分類される暗号化品目の輸出。 A本許可例外に基づき、暗号化品目をキューバ、イラン、イラク、リビア、 北朝鮮、スーダン又はシリアに輸出してはならない。 B報告要件§740.17(e)あり。(以下省略) (本HPの「許可例外ENCの抄訳」参照) |
4.許可例外使用上の注意事項 (1)許可例外を使用する場合に許可は要らない。 但し、適用条件を満たすものでなければならない。 (2)許可例外に基づく輸出の場合は、輸出申告書(SED)等にその記号(例え ばLVS)を記載しなければならない。 (本HPの「輸出通関手続き要件(EAR758章)」を参照) (3)暗号化貨物及びソフトウェアを許可例外に基づき輸出する場合、事前に BXAのレビューと分類を要するものがある。これについて、BXAの ホームページから"Encryption License Exception Chart"を参照すると良い。 (4)内容は必ずしも同一ではないが、本邦法令の「特例」(許可を要しない 技術提供取引を含む)*に対応するものが多数ある。 (例)・限度価格の積出し(LVS);少額特例 ・限定なしの技術及びソフトウェア(TSU)(a)操作技術及びソフトウェア ;必要最小限の使用技術 等 * 本HPの「許可を要しない輸出及び役務取引」を参照。 以上