輸出管理規則(EAR)の法的典拠

                     (partT.sec.6)           



第6項 「外交政策規制」

(a)権限

 (1)本法の第3項、節(2)の(B),(7),(8)又は(13)に述べる政策を遂行するために、

  大統領は、合衆国の外交政策を大いに推進し、或いは公言した国際的責務を

  遂行するために必要な範囲内で、合衆国の管轄権に属する又は合衆国の管轄

  権に属する者により輸出される、物品、技術、又はその他情報の輸出を禁止

  し或いは縮小することができる。本副項目により授与される権限は、商務長

  官が国務長官、国防長官、農務長官、財務長官、米通商代表部、及び商務長

  官が適切と考えるようなその他の省及び機関と協議した上で商務長官により

  行使され、商務長官により発行される輸出許可証によって実施されなければ

  ならない。

 (2)本項に基づき課された輸出規制は、例えかの輸出規制がその取引又は行動に

  別段適用されないとしても、かの輸出規制を回避する意図で引き受けられた

  如何なる取引又は行動にも適用されなければならない。

 (3)外交政策のために維持されている輸出規制は、大統領が副項目(b)及び(f)に

  従い延長していない限り、1979年12月31日又はその賦課から1年後

  のいずれか後の方の日に期限が切れる。前述の延長期間は1年を超えてはな

  らない。

 (4)商務長官が本副項目に基づく輸出許可を拒絶する時はいつでも、商務長官は

  当該許可に関し拒絶された申請者への通知書において、許可が本副項目に含

  まれる権限に基づき拒絶されたこと並びにその拒絶理由を、本項の副項目(b)

  に述べる判断基準に準拠して明記しなければならない。商務長官は併せて前

  述の通知に、許可要求のあった物品又は技術に、もしあれば、どんな修正若

  しくは制限を加えれば前述の輸出が本項に基づき実施される規制と両立し得

  ると認められるかを含めなければならない。又は、商務長官は前述の通知に

  おいて、もし適切なら、当該申請に精通している商務省の担当官及び従業員

  の内の誰が、その申請者にとって前述の修正又は制限に関し相談するのに都

  合が良いかを明らかにしなければならない。

 (5)本法の第10項の条項に従い、国務長官が本項に基づく輸出許可申請を見直

  すよう要請する時は、国務長官はこれを見直す権利を有するものとする。

 (6)外国の供給源から入手できる物品、技術、又は情報を利用でき、かつ、規制

  の結果としてそう言うふうに少しも或いは全く経済的損害を招かない国向け

  の輸出に関する本項に基づく輸出規制を課し、拡張し、又は延長する前に、

  大統領は外交手段を通じて、規制がそれに応じて提議されたかの国の具体的

  な行為(行為が先でそれに対応する規制)と合衆国(の行為)の違いをはっ

  きりさせ、かつ、その行為への合衆国の不満を表す機会を与える、輸出規制

  に代わる方策(代替案)を採用しなければならない。前述の代替案には外国

  の首脳陣との個人的な討議、民間外交が利用できないか又は効果がない場合

  の公式声明、大使の召還及び当該国の合衆国内に許容される外交職員の規模

  の削減を含む。

(b)判断基準

 (1)本副項目の節(2)を条件として、大統領が次の如く決定している場合に限り、

  大統領は本項に基づく輸出規制を課し、延長し、又は拡張することができる。

   (A)前述の規制を求め提起された物品又は技術をその他の国から入手できる可

   能性を含むその他要因を考慮すれば、前述の規制は意図する外交政策の目

   的を達成できそうであるが、一方、交渉又はその他の代替手段を通じては

   外交政策の目的が達成されるはずがない; 

   (B)提議された規制は合衆国の外交政策目標とも、及び提議された輸出規制を

   受けるその国に対する合衆国の全般的な政策とも両立し得る;

   (C)合衆国による前述の輸出規制の賦課、延長、又は拡張に対するその他の国

   の反応はその規制が意図する外交政策の目的を達成するのを無効にしそう

   でもなく、或いは、それが合衆国の外交政策権益に逆効果を招きそうでも

   ない;

   (D)合衆国の輸出実績、国際経済における合衆国の競争力、物品及び技術の供

   給者としての合衆国の国際的評価に関する、若しくは合衆国の個々の会社

   とそれらの従業員及び地域社会の経済的繁栄に関する、提議された規制の

   効果(-)が合衆国の外交政策目標にとっての利益(+)を超えていない;及び

   (E)合衆国はその提議された規制を有効に施行する能力がある。

 (2)1985年の輸出管理改正法制定日[1985年7月12日]に本項に基づく効力のあ

  るそれらの輸出規制に関し、大統領は本項の副項目(a)(3)に定める通りそれ

  らの規制を延長すべきか否かを決定する際に、本副項目の節(1)に述べる判断

  基準を考慮すると共に輸出規制を修正した場合の外交政策に及ぼす結果を考

  察しなければならない。

(c)産業界との協議

  商務長官は本項に基づく輸出規制を課す前に、可能な限りあらゆる場合にお

  いて影響を受ける合衆国の産業界及び1974年の通商法[19 U.S.C. §2155 ]

  の第135項に基づき設立された適切な諮問委員会と協議し、並びにそこに助言

  を求めなければならない。前述の協議と助言は副項目(b)(1)に述べる判断基

  準及び商務長官が適切と考えるその他の問題に関するものでなければなら

  ない。

(d)その他の国との協議

  本項に基づく輸出規制を課す時、大統領はできるだけ早い適切な機会に合衆

  国と輸出規制を協力して維持している国と、並びに大統領が適切と考えるそ

  の他の国と、副項目(b)(1)に述べる判断基準及び大統領が適切と考えるその

  他の問題に関し協議しなければならない。

(e)代替手段

  本項に基づく輸出規制の賦課に訴える前に、大統領は交渉若しくはその他の

  代替手段を通じて規制目的が達成できるような合理的な努力が成されている

  ように(決定)しなければならない。

(f)議会との協議

 (1)大統領は下院の国際関係委員会及び上院の銀行住宅都市委員会を含め、議会

  と協議した後に限り、本項に基づく輸出規制を課し或いは拡張し、若しくは

  本項の副項目(a)(3)に定めるところにより前述の規制を延長することがで

  きる。

 (2)大統領が次の報告書を議会に提出するまで、大統領は本項に基づく輸出規制

  を課し、拡張し、又は延長してはならない。その報告書は

   (A)その規制目的を明記し;

   (B)副項目(b)(1)に述べる各判断基準に関する大統領の決定(若しくは、副項

   目(b)(2)に記述する輸出規制の場合における大統領の考察)、前述の決定  

   (若しくは考察)の根拠、及び規制により起こりうる外交政策への悪影響

   を明記し:

   (C)副項目(c)に従い産業界との及び副項目(d)に従いその他の国との協議の、

   特質、主題、及びその結果又はそのための案を記述し;

   (D)副項目(e)に基づき企てられた代替手段の特質及び成果、若しくは前述の

   代替手段を試みることなく規制を課し、拡張し又は延長する理由を明

   記し;  及び

   (E)提議された輸出規制を受ける物品又は技術に匹敵する物品又は技術をその

   他の国から入手できる可能性を記述し、かつ、前述の匹敵する物品又は技

   術の海外利用を規制するために外国政府の協力を確保できるよう副項目

      (h)に従い成された努力の特質及び成果を記述したもの。

   前述の報告書は併せてどのようにして前述の規制が合衆国の外交政策を大

   いに推進し、又は公言した国際的な責務を促進することになるかを明らか

   にしなければならない。

 (3)当該輸出規制を有効に推進するに必要な範囲で、節(2)により要求される報

  告書の一部を議会に機密扱い方式で提出できるが、本法の第12項(c)の条項

  に従わなければならない(注2)(注2)公法104-316 §128(c)(110 Stat. 3841)により

     本副項目の遵守を査定する目的で会計検査院に該報告書を提出するよう規

   定している二番目の文章を削除する副項目(f)(3)の改正が行われている。

 (4)農産物の輸出を禁止し或いは縮小する本項に基づく輸出規制の場合に、節

  (2)に従って提出される報告書は本法の第7項(g)(3)(A)により要求される

  報告書と見なされなければならない。

 (5)本項に基づき要求される文書による報告書に加えて、商務長官は、1年を超

  えない間隔で、上院銀行住宅都市委員会及び下院国際関係委員会の口頭証言

  において本項の条項を遂行するために政府が取った政策と行動に関する報告

  書を提出しなければならない。

(g)医療及び医薬品の並びに一定の食糧の除外

  本項は医療又は医薬品に関する輸出規制の権限を与えない。本項は併せて人

  間の基本的要求を満たすことを目的とする物品(これに限定するものではな

  いが、食糧、教材、種と(種まき)手工具、医療と医薬品、水資源関連装置、

   衣料と住居用の材料、及び基本的な家庭必需品を含む)の寄贈に関する輸出

  規制の権限を与えない。食糧に関する輸出規制を本項に基づき課し、拡張し、

  或いは延長する前に、商務長官は先進国に適用する輸出規制の場合には国務

  長官に通知し、開発途上国に適用する輸出規制の場合には国際開発庁長官に

  通知しなければならない。先進国に関し国務長官が、及び開発途上国に関し

  開発庁長官が、食糧に関する提議された輸出規制は無視できないほどの栄養

  不良の原因となるか否かを決定し商務長官にかの決定を報告しなければなら

  ない。もし、商務長官が食糧に関する提議された輸出規制は無視できないほ

  どの栄養不良を引き起こすとの報告を受けるなら、その後場合によっては、

  大統領がそれらの規制は合衆国の国家安全保障権益を保護するのに必要であ

  ると決定しない限り、若しくは大統領が食糧が最も必要とする人々に届くよ

  うになるのを確実にするには現在の協定は不充分であると決定しない限り、

  前述の輸出規制を課し、拡張し或いは延長してはならない。国務長官又は開

  発庁長官による前述の各決定、及び大統領による前述の決定も、かの決定の

  理由説明と一緒に議会に報告されなければならない。もし、大統領が前述の

  物品又は技術の輸出の主要効果は人間の基本的要求を満たす助けになる(人

  道的な)ものと決定しているなら、大統領が物品又は技術に関する本項に基

   づく輸出規制を課さないように願うのが議会の意図である。本副項目は大統

  領が国際緊急経済権限法[50 U.S.C. §1701以下参照 ]に基づく医療又は

  医薬品の、若しくは食糧の輸出に関する制限を課すことを禁止すると解釈し

  てはならない。本副項目は1985年の輸出管理改正法制定日[1985年7月12日]

  に効力のある、寄贈を除く医療、医薬品、又は食糧に関する輸出規制に適用

  されない。本副項目の前の条項にも係わらず、大統領は本法の第3項節(13)

  (注3)に述べる政策を遂行するために医療、医薬品、食糧、及び物品の寄贈に

  関する本項に基づく輸出規制を課すことができる。

(注3)公法105-277 §1422(b)(7)(112 Stat. 2681-793)により

   合衆国国際開発協力庁局長から国際開発庁長官への引用の改正が行われて

   いる。

(h)海外利用

 (1)本項に基づく輸出規制を適用するにおいて、本項に基づき規制される物品又

  は技術に匹敵する物品又は技術の、対外輸出及び合衆国の輸出規制が適用さ

  れる荷受人を規制するために、大統領は適切な外国政府の協力を確保する目

  的で前述の外国の政府と交渉を開始し、結論を出すためにあらゆる実行可能

  な措置を講じなければならない。

 (2)本項の副項目(a)(3)に従い如何なる輸出規制でも延長する前には、大統領が

  本副項目の節(1)に基づく活動結果を評価し、かつ、その評価結果を本項の

  副項目(f)に従う議会への報告書に含めなければならない。

 (3)もし、本項に基づく輸出規制が課され或いは拡張された日以後6ヵ月以内に、

  若しくは1985年の輸出管理改正法制定日に効力のある輸出規制の場合には前

  述の制定日以後6ヵ月以内に、節(1)に基づく大統領の努力がそれら輸出規

  制に関し節(1)に記述する外国政府の協力を確保するのに成功しなければ、

  その後、商務長官は輸出規制を受けるその物品又は技術の海外利用を考慮

  しなければならない。もし、輸出規制を受ける物品又は技術が、輸出許可を

  拒絶しても規制目的を達成するのに役立たない程充分な量と匹敵する質の形

  で、輸出規制を受ける国に合衆国以外の供給源から入手されると商務長官が

  断定的に決定するなら、それから商務長官は、前述の海外利用のある期間中

  ずっと、その物品又は技術の輸出に要求され、かつ、全ての許可要件を満た

  す如何なる許可申請も承認しなければならない。もし、商務長官がそうする

  のが適切であると決定するなら、商務長官は本項の副項目(l)に従って確立

  したリストからその物品又は技術を取り去らなければならない。

 (4)本副項目の節(3)に基づく海外利用の決定をするにおいて、商務長官は本法

  第5項(f)(3)に述べる手続きに従わなければならない。

(i)国際的責務

  副項目(b),(c),(d),(e),(g)及び(h)の条項は、合衆国が参加する条約に従う

  若しくはその他の国際的協定に従う合衆国の責務を遂行するためであって、

  本項に入っている輸出規制を課し、或いは輸出許可申請を承認又は拒絶する

  権限を大統領が行使する場合には、適用されないものとする。

(j)国際テロリズム支援国家

 (1)もし、国務長官が次の如く決定しているなら、公認された許可証が下記の国

  向けの物品又は技術の輸出に要求されるものとする。

   (A)前述の国の政府は国際テロリズム活動に支援を繰り返し与えている;

   (B)前述の物品又は技術の輸出がその国の軍事後方(兵站)能力を含め前述の

   国の軍事的潜在力に重要な貢献をし、若しくは国際テロリズム活動を支援

   する前述の国の能力を高めている。

 (2)商務長官及び国務長官は、節(1)により要求される公認された許可証を発行

  する少なくとも30日前に、下院国際関係委員会及び上院の銀行住宅都市委

  員会と外交委員会に通知しなければならない。

 (3)1989年の反テロ及び武器輸出改正法制定日[1989年12月12日]に効力のある

  各決定を含め節(1)(A)に基づく国務長官の各決定は官報で公表されなければ

  ならない。

 (4)節(1)(A)に基づく国務長官による決定は、大統領が下院議長及び上院の銀行

  住宅都市委員会委員長及び外交委員会委員長に次の報告書を提出しない限り、

  廃止されてはならない。

   (A)廃止の提議が実施される前に、次のことを証明する報告書

     (@)当該国政府の指導部及び政策に根本的な変化が起こっている;

     (A)かの政府は国際テロリズム活動を支援していない; 及び

     (B)かの政府は今後は国際テロリズム活動を支援しないと確約している;

   若しくは

   (B)廃止の提議が実施される少なくとも45日前に、廃止を正当化し、かつ、

   次のことを証明する報告書

     (@)当該政府は先立つこと6ヵ月の期間に国際テロリズムに如何なる支援

     も提供していない;  及び

     (A)当該政府は今後は国際テロリズム活動を支援しないと確約している。

 (5)商務長官及び国務長官は節(2)により要求される通知に次のことを含めなけ

  ればならない

   (A)輸出するために許可証が求められる品物の機能の簡単な説明を含め、提供

   される物品又は役務の詳細な説明;

   (B)そこへの輸出又は移転が行われるよう提議された外国若しくは国際組織が

   前述の輸出又は移転の主題(対象)である物品又は役務を必要とする理由、

   及び前述の国又は組織が前述の品物、役務、又は建設設計・施行業務を利

   用せんとする仕方の説明;

   (C)提議された輸出又は移転が合衆国の国益に沿う理由;

   (D)そこへの提議された輸出又は移転が行われるその外国又は国際組織の軍事

   的能力に及ぼす前述の輸出又は移転の影響の分析;

   (E)提議された輸出が、その輸出の主題(対象)である物品又は役務がそこへ

   引き渡されたその地域における国々の相対的軍事力に及ぼす仕方及び、そ

   の地域におけるその他の国々が似通った種類と量の品物、役務、又は建設

   設計・施行業務を有するか否かの分析; 及び

   (F)提議された輸出又は移転が、その輸出の主題(対象)である物品又は役務

   がそこへ引き渡されたその地域における国々と合衆国との関係に及ぼす影

   響の分析。(注4)

(注4)公法103-326 §736(108 Stat. 506)により

   (上記の)副項目(j)(5)が追加された。

(k)その他の国との交渉

 (1)特定の協定に参加する国

  国務長官は商務長官、国防長官、及びその他適切な省及び機関の長と協議し

   て、調整委員会、ミサイル関連技術規制体制、オーストラリア・グループ、

   及び核供給国グループとして知られるグループに参加しているそれらの国々

   と、次の政策を遂行するための物品及び技術の輸出制限に関する協力につい

   て、交渉を行う責任を負わなければならない。

   (A)本法の第3項(2)(B)に述べる政策[50 U.S.C.付録§2402(2)(B)]及び

   (B)本副項目(k)及び副項目(a)及び(l)に従って、化学、生物、核、及びその

      他の兵器並びにそれらの運搬手段の拡散に反対し、前述の兵器とそれらの

   運搬手段の軍民両用部分品の輸出を有効に制限する合衆国の政策。

   前述の交渉は、その他諸問題の中でも特に、どの物品又は技術が多国間で同

  意した輸出制限に属すべきか、及び本法の第5項(b)(2)(C)に規定する原則に

  合致する制限の履行[50 U.S.C.付録§2402(b)(2)(C)]を取り上げなければ

  ならない。

 (2)その他の国

  国務長官は商務長官、国防長官、及びその他適切な省及び機関の長と協議し

   て、節(1)の中で言及されていない国及び国家集団と、節(1)に述べる目的に

  合致する物品及び技術の輸出制限に関する協力について、交渉を行う責任を

  負わなければならない。前述の交渉が、商務長官が国務長官及び国防長官と

  協議して本法の第5項(b)(2)(C)に規定する原則に合致するもの[50 U.S.C.

  付録§2404(b)(2)(C)]として決定する輸出制限に関し合意を産む場合は、

  商務長官は個別又は複合許可証の如何に係わらず、前述の合意参加国向け輸

  出をMTCR支持国に対するのと同じ方法で取り扱うことができる。

 (3)決定の見直し

  商務長官はある国に関する節(2)に基づく如何なる決定も毎年見直ししなけ

  ればならない。第5項(b)(2)(C)に従う有効な輸出規制システム要件[50 

  U.S.C.付録§2404(b)(2)(C)]を満たさないと商務長官が決定する各国につ

  いて、商務長官は本副項目に基づき規定されるかの国向け輸出に対する許可

  優遇措置を制限し又は除去しなければならない。

(l)ミサイル技術

 (1)規制品目の決定

  商務長官は国務長官、国防長官、及びその他適切な省及び機関の長と協議し

   て、

   (A)本項に基づき確立した規制リストの一部として、MTCR付属文書上の全

   ての軍民両用物品及び技術を規定し、維持しなければならない;  及び

   (B)本項に基づき確立した規制リストの一部として、ミサイルの運搬手段の開

   発に直接・即時に影響を与え、かつ、MTCR付属文書に含まれていない

   が合衆国がMTCR文書に含まれるようその他のMTCR支持国に提案中

   の 物品及び技術を包含することができる。

 (2)個別の公認された許可証の要件

  商務長官は次のものについて個別の公認された許可証を要求しなければなら

  ない。

   (A)如何なる国向けであれ節(1)に基づき確立されたリスト上の物品又は技術

   の輸出;  及び

   (B)MTCR支持国でない国におけるミサイルの設計、開発、又は製造のため

   の事業若しくは施設向けであることを輸出者が知っている物品又は技術の

   輸出。

 (3)許可証の拒絶方針

   (A)もし、物品又は技術の最終荷受人がミサイル関連技術規制体制の支持者で

   ない国にある施設であって、その施設がミサイルを開発し又は組み立てる

   ように作られているなら、節(2)に基づく許可証は全般的に拒絶されなけ

   ればならない。 

   (B)もし、物品又は技術の最終荷受人が、その国の政府は繰り返し国際テロリ

   ズム活動に支援を提供していると副項目(j)に基づき決定されている国に

   ある施設なら、節(2)に基づく許可証は拒絶されなければならない。

 (4)その他の省との協議

   (A)ミサイル拡散に関し懸念される国向けの物品又は技術の輸出についての節

   (2)に基づく輸出許可証を承認する商務長官の決定は、国防長官及び国務

   長官との20日間の協議を終えた後に限り行うことができる。前の文の中

   で言及されているその懸念国は、商務長官及び国防長官と協議の上、国務

   長官により一つの分類表上に維持されなければならない。

   (B)もし、国防長官が副段落(A)が適用される輸出許可証を承認する商務長官

   の決定に賛同できないなら、国防長官は決定に関する協議に与えられた

   20日間以内に商務長官にそのように通知しなければならない。国防長官

   は同時にその論争の解決のためにその件を大統領に申し立てなければなら

   ない。商務長官も併せて当該許可申請に関する商務長官の大統領への勧告

   書を提出しなければならない。

   (C)大統領は副段落(B)に基づく国防長官の申立てを受け取った後20日以内

   にその輸出許可申請を承認又は不可としなければならない。

   (D)もし、国防長官が副段落(B)に規定する期間内に商務長官に通知しないな

   ら、商務長官は国防長官による通知を待たずにその許可申請を承認できる。

   もし、大統領が副段落(C)に規定する期間内にその輸出許可申請に関する

   裁決を商務長官に通知しないなら、商務長官は大統領の当該許可申請に関

   する裁決を待たずにその許可申請を承認できる。

   (E)本副項目に基づき輸出許可証が発行された後10日以内に、商務長官は国

   防長官及び国務長官に許可申請書と申請者に給付した付随書類を、関連す

   る長官が前述の申請書と書類の受取の必要性を明らかにしている範囲内で

   提供しなければならない。

 (5)情報の共用

  商務長官は中央情報局長官が決定する適切な諜報機関職員及びその他の適切

  な政府機関との情報の共用手順を確立しなければならず、そしてそれがMTCR

  関連の装置又は技術及びその他のミサイル技術の移転の効果的監視を確保す

  ることになる。

(m)化学・生物兵器

 (1)リストの確立

  商務長官は国務長官、国防長官、及びその他適切な省及び機関の長と協議し

   て、本項に基づき維持するリストの一部として、外国の政府又はグループが

  化学又は生物兵器を開発、生産、貯蔵又は運搬する能力を獲得するのを直接

  かつ実質的に支援する物品及び技術であって、その使用許可が前述の能力の

  取得又は機能強化を妨げるのに有効なもの、のリストを確立し維持しなけれ

  ばならない。

 (2)公認された許可証の要件

  商務長官は如何なる懸念国向けであれ節(1)に基づき確立されたリスト上の

  物品又は技術の輸出について公認された許可証を要求しなければならない。

 (3)懸念国

    節(2)では、術語”懸念国”は次の(A),(B)国以外の国のことを言う。

   (A)合衆国がその政府と節(1)に基づき確立されたリスト上の物品又は技術の

   規制について2国間又は多国間協定を結んでいる国;  及び

   (B)国務長官が商務長官及び国防長官と協議して、1991年の化学・生物兵器規

   制と戦争行為廃絶法(注5)の目的に一致していると指定すべき((A)を除く)

   その他の国。

(注5)1991年の化学・生物兵器規制と戦争行為廃絶法

   公法102-182 §304(b),105 Stat. 1245,1246-1247に副項目(m)を追加。

   上記の法の304(a)項で大統領に”外国の政府が化学又は生物兵器を開発、

   生産、貯蔵、運搬又は使用する能力を獲得するのを支援することになると

   大統領が決定したそれらの物品及び技術の輸出を規制するために、1979年

   の輸出管理法の権限を使用する。”よう指示している。(22 U.S.C.§5603)

(n)犯罪規制器具

 (1)犯罪の規制と検出のための器具及び装置は公認された輸出許可証に従う場合

  に限り商務長官により輸出が承認されるものとする。本法のその他条項に係

  わらず、次の(A)及び(B)が適用される。

   (A)本副項目により課された輸出制限の結果として、どの物品又は技術を本項

   の副項目(l)に従い確立されたリストに含めるべきかの商務長官の決定は

   国防長官の同意を得て行われなければならない。  及び

   (B)犯罪の規制又は検出のための器具又は装置を輸出する輸出許可申請を承認

   し若しくは拒絶する商務長官の決定は、本法の第10項(e)に準ずるその申

   請に関し商務長官に提出された国務長官の勧告に一致するように行われな

   ければならない。但し、もし、商務長官が副段落(A)又は(B)に基づく決定

   に関し国務長官と意見を異にし、その問題の解決が大統領に付託されるこ

   とになる場合を除く。

 (2)本副項目の条項は、北大西洋条約機構加盟国向け、又は日本、オーストラリ

  ア、若しくはニュー・ジーランド向け、或いは大統領が本副項目及び1961年

  の対外援助法[22 U.S.C.§2304]の502B項の目的に一致していると指定す

  べきその他の国向け、輸出に関し適用してはならない。

(o)規制リスト

   商務長官は規制リストの一部として、本項に基づく輸出規制を受ける物品又

  は技術のリスト、及び前述の規制が適用される国を確立し維持しなければな

  らない。商務長官は規制リスト上で、どちらの物品又は技術が、及びどちら

  の国又は仕向け地が本項に基づくどの種類の規制を受けるかを明確に特定し

  なければならない。前述のリストは商務長官の同意を得て国務長官により規

  定された物品及び技術から成らなければならない。もし、商務長官と国務長

  官がそのリストに関し合意できないなら、その問題は大統領に付託されなけ

  ればならない。前述のリストは、その他の国と協力して維持している規制の

  場合は3年毎を超えない間隔で、及びその他全ての規制の場合には毎年、本

  項を遂行するのに必要な改正をするために見直しされなければならない。前

  述の見直しの過程において、本項に基づき合衆国からの輸出が規制されるも

  のに匹敵する物品又は技術を、合衆国或いはその領土又は属領以外の供給源

  から入手できる可能性を元に査定が定期的に行われなければならない。

(p)現存する契約及び許可の効果

  大統領は次の場合に、本項に基づき物品、技術、又はそれらの情報の輸出若

  しくは再輸出を禁止し又は縮小してはならない。 

 (1)本項の副項目(f)に従い、大統領が議会に前述の物品、技術、又はその他の

  情報の輸出又は再輸出に関し規制を課すその意図を報告する日以前に結ばれ

  た契約若しくは協定を実行する場合、 又は

 (2)公認された許可証又は本法に基づき発行されたその他の認可に基づく場合。

  大統領が議会に次のことを決定し証明しない限り及びするまでは上記条項が

  適用される(下記の証明が成された場合はこの限りではない)。

   (A)治安破壊が合衆国の戦略上の権益を重大かつ直接脅かし、

   (B)前述の契約、協定、許可、又は認可の禁止又は削減が直接脅威を引き起こ

   す状況の改善に役立つ、 及び

   (C)その輸出規制は直接脅威が続いている間だけ続行される。

(q)特定の規制の延長

   1982年2月28日に効力があり、1982年3月1日、1982年9月15日、又は1983年1月

  20日に無効になった南アフリカに関し本項に基づき課されたそれらの輸出規

  制は本副項目の制定日[1985年7月12日]に発効し、前述の制定日以後1年経

  過するまで有効とする。かの1年の期間の終わりに、本副項目により有効に

  なったそれらの規制は何であれ本項目の副項目(b)及び(f)に従い大統領が延

  長することができる。

(r)規制を課すための権限の拡張   

 (1)本項の副項目(c),(d),(e),(g),(h),又は(p)に含まれる如何なる制限もなし

  に、本項に基づき規制を課すことが必要であると大統領が決定するときはど

  んな場合でも、もし、大統領がかの決定を議会に提議された規制に関する本

  項の副項目(f)に従う報告書と一緒に提出する場合に限り、かつ、それらの

  規制を課す権限を付与する法律が制定されている場合に限り、大統領はそれ

  らの規制を課すことができる。もし、議会が大統領の決定及び報告書を受け

  取ってから、30日以内にそれらの規制の賦課を認める共同決議がどちらか

  の議院に提出されるなら、かの共同決議は上院銀行住宅都市委員会に及び適

  切な下院の委員会に付託されなければならない。もし、前述のどちらの委員

  会もその付託から30日の終わりの日にその共同決議を告発していないなら、

  その委員会はその共同決議についてさらに検討する必要はない。

 (2)本副項目では、述語”共同決議”とはその決議条項の後のことが次の如くな 

  っている共同決議を言う。”大統領の決定書と共に議会に提出された報告書

  に述べるその輸出規制に関する、1979年の輸出管理法の第6項(r)(1)に基づ

  く大統領の決定を受け取ってから、議会が大統領がそれらの輸出規制を課す

  ことを認めている”ものであって、決定書及び報告書の受領日が空欄になっ

  ているもの。

 (3)節(1)に言及する30日の期間の計算において、3日以上からある決まった

  日まで延期されているせいで、又は議会の無期限延期のせいで、どちらかの

  議院が閉会中の日数を除外しなければならない。

(s)予備部品

 (1)大統領が本項に基づく輸出規制を課し又は拡張すると同時に、大統領は前述

  の輸出規制がその規制を受ける物品中の部品に対する交換部品に適用される

  か否かを決定しなければならない。

 (2)本副項目の制定日[1988年8月23日]以前に本項に基づき課された輸出規制  

  に関し、合衆国から合法的に輸出された物品中の部品を一対一制で交換する

  ために輸出する交換部品について、個別の公認された輸出許可証が要求され

  てはならない。但し、大統領が前述の部品について係る許可証を要求しなけ

  ればならないと決定している場合はこの限りではない。  

 





[訳者補足]

 1.第6項(a)(4)のspecify in 〜 of such license that ・・・について

   the denial of suchのofは[関係]〜に関するを表す。従って、the 

   applicant of the denial of such licenseは’当該許可に関し拒絶され

      た申請者’となる。また、that〜subsectionのthatは名詞節を導く等位接

   続詞であって、and the reasons〜denialと共にspecifyの目的語となる。

   なお,with reference to以下の句はコンマで区切られているから、前記の

   目的語を修飾しないでspecifyに掛かる前置詞句の副詞的用法となる。

   (ここでは、of suchの前にコンマがなくwith referenceの前にコンマの

    あるUnited States Codeを原文として採用した)

 2.第6項(a)(6)における opportunities of distinguishing A from B 

   ここで A:the United States,B:the specific actions of that country。

   distinguish fromは’区別する’、或いは’特徴付ける’を意味する。

   どちらにしても同質なものの比較でなければならないと考える。そこで、

   A:(actions of)the United Statesの如く( )内のものが暗黙の了解となっ

   ていると思う。本文の場合は両者の違いを訴える機会だから、’区別する’

   より’特徴付ける’の方を選ぶことにした。訳文は本文に示す通りである。 

 3.第6項(a)(6)の,the President should,・・・are proposed.の構文解釈

   次にこれを句又は節に分解し、それらの間の関係及び意味を示す。

  @the President should,これはthe Presidentが本文の主語である。

  Athrough diplomatic means,@とBの間の挿入句で補足説明をする。

  Bemploy alternatives to export controls which offer opportunities

      of これは主語@の述語部であって、ofの目的語CとDを取る。

   つまり、C合衆国とかの国との違いを訴え、かつ、Dかの国の行為に不満

   を表す機会を与える輸出規制代替案を採用すべしと言うことである。

   (whichの先行詞としてexport controlsも考えられるが、whichの後に続

    く関係節の一部Eに同じ意味のthe controlsがあるので採用できない)

  Cdistinguishing the United States from,

  Dand expressing the displeasure of the United States with,

  Ethe specific actions of that country in response to which the

      controls are proposed.これはCDの前置詞from/withの目的語となる。

   その具体的な行動(specific actions)とは、それに応じて当該規制が提議

   されているものである。訳文は本文に示す通りである。

 4.第6項(b)(1)(B)におけるthe country to which exports are・・・について

   前置詞+whichについて講談社英和辞典p.1516から抜粋し次に示す。

  ・There was always harmony in the group of which he was the leader.

   彼が指導者になっていたグループにはいつも和気があった。

   the groupは主節に属する。(次例と比較)

  ・Japan is a country the capital of which has an enormous population. 

   日本は(その)首都が膨大な人口を有する国である。

   the capitalは関係節に属する。(前例と比較)

   上記例より先行詞が本件の前置詞の直前の名詞又は名詞句の場合(前の例)

   は、関係節において前置詞+whichは主語に成り得ず述語部を修飾する。

   (逆に言えば、この場合に関係節中の主語を修飾することはないと思う)

   一方、先行詞が直前の句でない場合(後の例)は、whichのすぐ後に述語

   部が来ておりwhichを含む前の句が関係節中の主語になることが分かる。

   以上のことから本題の先行詞がcountryであれば、to whichが関係節中の

      主語であるexportsを修飾せずare以降の述語部を修飾するものと考える。

   訳文は本文に示す通りである。

 5.第6項[注3]におけるamended references to 〜の構文について

   国際開発協力庁(前者)は1999.4.1に廃止されその一部が国際開発庁(後

   者)として存続されていることから、前者から後者に改正されたことを意

   味するはずである。そうするとto以降は(from) to A (to) to Bの如く解

   釈できると思う。その結果、AからBへの改正された引用となる。訳文は

   本文に示す通りである。

 6.第6項(j)(5)(B);the reasons why A to which B needs C which are D

   の構文解釈

   先ず名詞reasonsを修飾するwhy以降の形容詞節の主語と述語を確定する。

    needsが目的語goods or servicesを取っているからこれが述部の動詞、主

   語はA to which Bである。また、which are DはCを修飾する関係詞節であ

   る。ここでは特に主語部の構文について考える。その骨格部を抜書きする

   と次のようになる。

    "the country to which the export is proposed to be made"

   which以下の関係節中の主語はexportだから、不定詞to be madeの意味上

   の主語も同じくexportとみなせ、この部分はthe export is made to the 

   coutryの意味になる。従って、”輸出がそこ向けに行われるよう提議され

   たその国”と訳せる。訳文は本文に示す通りである。





[改訂来歴]

 REV1 '09.08.06  第6項(a)(4)のspecify in 〜 of such license that ・・・

         の構文解釈において、これをsuch *** thatと取るのではな

         くspecify **** thatと見るよう訂正し、これに合せ本文(4)

         の最初の文及び[訳者補足]1項を訂正した。

         参考のため改訂前の訳を次に示す。

    本文(4)の最初の文;商務長官が本副項目に基づく輸出許可を拒絶する

    時はいつでも、商務長官は本副項目に含まれる権限に基づき拒絶したそ

    う言う許可証について、申請者への拒絶通知において、本項の副項目(b)

    に述べる判断基準に準拠するその拒絶理由を明記しなければならない。

    [訳者補足]1項;specifyは他動詞だから目的語を取るときは前置詞 

    of等を介せず直接名詞句を取る。ここで、ofは関係;’に関して’’に

    ついて’を表す。従って、”・・・したそう言う許可証について〜に明記

    する”と訳した。