制限的取引慣行又はボイコット

                       (§760.2-1/3)

§760.2 「禁止事項」

(a)商取引拒否

   『商取引拒否禁止事項』

 (1)米国人は誰でも、被排斥国との又はその国での商取引に関し、それを拒絶

   することが排斥国との協定、或いは排斥国の要求、又は排斥国若しくはそ

   の代理者からの要請に従うことになる時は、被排斥国の法律に基づき設立

   された企業と、被排斥国の国民若しくは居住者と、或いは如何なる者と、

   前述の商取引をすることを、拒絶し、知っていながら拒絶に同意し、その

   他の者に拒絶するよう要求し、或いは知っていながらその他の者に拒絶す

   るよう要求することに同意する ことをしてはならない。

 (2)通例、本節における商取引拒否は不買同盟を理由に或る者又は国を取引か

   ら締め出す措置から成る。これには米国人が、その他残りの者の選抜が不

   買同盟を根拠とすることを知っているか、若しくは知リ得る理由を有する

   場合に、不買同盟を根拠としてもう一つの者よりも或る者を選択若しくは

   選抜するか、或いは、不買同盟を根拠とするもう一つの者の選抜をしてし

   まう措置を取る場合を含む。

 (3)本節により禁止される商取引拒否は、明確な拒否のみならず行動の過程又

   は様式により黙示された拒否を含む。そこでは商取引拒否となる明確な申

   し出及び拒否を必要としない。米国人が金融又は商業の機会を得て、それ

   を検討し若しくは受け入れることを不買同盟を理由として辞退する場合に、

   拒否が起こるのである。

 (4)米国人が、不買同盟を根拠とする取引してはならない者一覧(所謂、ブラ

   ックリスト)、又は不買同盟を根拠とする取引してよい者一覧(所謂、ホ

   ワイトリスト)のどちらを使用しても商取引拒否になる。

 (5)米国人が商取引をしている相手の排斥国の法律に全般的に従うことの合意、

   若しくは排斥国の現地の法律が適用され、又はそれにより取り締まりが行

   われることへの合意は、それ自体は、商取引拒否ではない。そしてまた、

   契約書の条項に製品を配送できない場合の損失について明示的に記載する

   よう要求することも、それ自体は、前述の条項に従わないか、従えない者

   との商取引拒否にならない。(少なくとも本章の§760.4 ”くぐり抜け”

   を参照のこと)

 (6)もし、不買同盟を理由に、合衆国の事業所総括管理者がもう一つの者より

   も或る供給者を選択するか、或いはもう一つの者よりも或る供給者と契約

     を結ぶか、又はその依頼人(client)にそうするよう助言するなら、その時

     点から、事業所総括管理者の措置は本節に基づく商取引拒否になる。(訳

     者注:この後の文におけるpre-award及びpost-awardは前記のその時点の

     前後を表すものと解釈し、それぞれ事前、事後と訳した。)しかしながら、

     米国人が別の者のために運用、調達、その他の事前の役務(services)を提

     供することは、次の場合に限り、本節に基づく商取引拒否にならない。そ

     の場合とは、係る提供が行われる国が排斥国か、非排斥国かに係わらずそ

     の役務提供が係る企業(又は、その企業を含む業界)で慣例となっており、

     かつ、米国人が、係る役務を提供する際に不買同盟を理由として或る者又

     は国を取引から排除する行為をせず、或いはその他不買同盟を根拠とする

   措置を取らない場合に限る。 

     例えば、排斥国における建設事業に関連して総合的運用処理法(general 

     management services)の提供を契約している米国人は、もし、次の条件を

     満たすならば、その依頼人のために資格のある入札者リストを編集しても

     良い。その条件とは、前記リストの提供が慣例によるものであり、かつ、

     資格のある者がブラックリストに載っていることを理由としてリストから

     排除されていないことである。

 (7)事後の役務提供に関し、もし、依頼人が不買同盟を根拠とする選抜をする

   ならば、依頼人の選択を遂行するために合衆国の事業所総括管理者若しく

     は契約者により取られた措置は、それそのものが商取引拒否となる。但し、

     合衆国の契約者はその依頼人の選択が不買同盟を根拠とすることを知って

     いるか、若しくは知リ得る理由を有するものとする。(合衆国の契約者が

     併せて事前の役務を提供したかどうかは関係がない。)係る措置には、選

     抜された供給者と契約を結ぶこと、供給者に依頼人の選択を通知すること、

     依頼人に代わって契約を実行すること、供給者の貨物の検査及び船積みを

     手配すること、又は依頼人の選択が実施されるためのその他有らゆる措置

     を取ることを含む。(少なくとも、事後の役務提供に適用されるところの

     §760.3(d)”一方的選抜に従うこと”を参照のこと。)

 (8)禁止事項は合意のみならず、排斥国の要求、及び排斥国から又はその国に

   代わっての要請に従い取られた措置に及ぶから、合意は本節に対する違反

   の必要条件ではない。

 (9)本節における合意には、明示的なもの或いは行動の過程又は様式により黙

   示されるものがある。そこでは米国人による措置について、排斥国との協

   定、或いは要求に従い取って置くべしとする排斥国からの直接的な要請を

   必要としない。

 (10)この禁止事項は、他の全ての項目と同様に、合衆国の州際通商又は外国貿

   易に属する米国人の行為に関するものに限り、かつ係る行為が認可・承認

   されていない外国の不買同盟に従い、推進し、或いは、支持する意図を持

   って企てられる場合に限り適用される。被排斥国の法律に基づき設立され

   た有らゆる企業との、被排斥国の(単独、複数を問わず)国民又は居住者

   との、若しくはその他有らゆる者との、被排斥国における又はその国との

   業務関係がないだけでは、必須要件の意図が存在しないことを明らかにで

   きない。

     《商取引の拒否及び拒絶に同意する例》

   下記の例は、不買同盟に関するもので、商取引の拒否又は商取引拒絶に同

   意することが禁止されている場合を決定する際の指針を与えんとするため

   のものである。これらの例は説明のためのものであって全ての場合を網羅

   しているものではない。

     [商取引の拒否]

   (@)合衆国の製造業者であるAは、排斥国YからAの製品の注文を受けてい

    る。その注文に応ずるため、AはAの製品に使用される部分品の製造業

    者である合衆国の会社、B及びCからの入札を求めている。Aは、しか

    しながら、前述の部分品を同じく製造している合衆国の会社D又はEか

    らの入札を求めていない。何故なら、AはD及びEがYで商取引するこ

    とを制限されており、またそれらの製品が、それ故に、Yへ輸入できな

    いことを知っているから。

    A社は不買同盟を理由にD及びEからの入札募集を拒絶してはならない。

    何故なら、そうすることはかの者達との商取引を拒否することになるか

    ら。

   (A)合衆国の輸出業者であるAは、合衆国の保険業者であるBをAの全ての

    海外顧客向け貨物の出荷に保険をかけるために使用している。初めて、

    Aは排斥国YからAの製品の注文を受けている。BがYのブラックリス

    トに載っていることを知っているので、Aはブラックリストに載ってい

    ない合衆国の保険業者C社とY向け貨物の出荷に保険をかけるよう取り

    決めている。Aの措置はBとの商取引を拒否することになる。

   (B)合衆国の輸出業者であるAは、その全ての責任保険を被排斥国Xで商取

    引している合衆国の会社B社から購入している。Aはその事業を排斥国

    であるY国に拡張したいと望んでいる。そうする前に、Yで商取引をす

    る条件としてAがBとの関係を切り離すようにと言うYからの要請があ

    るものと予期して、Aは保険業者Bから保険業者Cに切替えることを決

    心している。Aはこの理由により保険業者を切替えてはならない。何故

    なら、そうすることはBとの商取引を拒否することになるから。

    (訳者注:責任保険(liability insurance)とは、被保険者が人に対し

         損害賠償の義務を負ったときにその損害額を補填する保険)

   (C)合衆国の会社Aは排斥国Yへ貨物を輸出する。Y向け貨物を輸送する船

    舶を選抜する際、AはYの港に寄港する運送業者に限定し、その中から

    選択する。Aの措置はYの港に寄港しない運送業者との商取引拒否にな

    らない。

   (D)排斥国Yに支店を有する合衆国の銀行Aは、被排斥国Xに支店を開設す

    るための計画を討議するために代表者をXに派遣する。これらの討議を

    聞き知って直ちに、Yの不買同盟地方事務所の職員がAの現地の支店長

    に、もし、AがXに事務所を開設するならば、もはやYで商取引するこ

    とは許されなくなるであろうと助言する。この通告の結果として、Aは

    Xに支店を開設するその計画を断念する決心をする。

    銀行Aは、Yの通告の結果として、Xに支店を開設するその計画を断念

    してはならない。何故なら、そうすることは被排斥国Xでの商取引拒否

    になるから。

   (E)事務機を製造する合衆国の会社Aは、被排斥国Xとの業務関係のために、

    排斥国Yでの商取引を制限されてきている。YのブラックリストからA

    を外して貰おうと努力して、AはXにおけるその業務を止める。

    Aの措置は被排斥国での商取引拒否になる。

   (F)合衆国のコンピュータ会社Aは、排斥国Yで商取引をしている。Aは被

    排斥国Xでのビジネスチャンスを探る決心をする。Xでのビジネスチャ

    ンスの可能性について綿密な解析の後、Aは単に営業上の理由からXで

    Aの製品を売り出さないことを決定する。Aの打ち切り決定は商取引拒

    否ではない。何故なら、それは不買同盟問題に基づいていないから。

    AにはXで商取引をすべき確定的な義務はない。

   (G)排斥国Yで操業をしている合衆国の石油会社Aは、合衆国の石油掘削設

    備供給者B,C,及びDから設備を定期的に購入する。そして、前記供

    給者のいずれもYのブラックリストに載っていない。B,C,及びDと

    のその満足すべき関係の故に、AはYのブラックリストに載っているE

    を含めて、その他の供給者とは取引していない。

    Aがブラックリストに載っているEとの業務を全く求めようとせず、或

    いは確保しようとしないのは、Eとの商取引拒否にならない。

   (H)(G)と同じ。但し、排斥国Yのブラックリストに載っている会社である

    合衆国の石油掘削設備供給者Eが、合衆国の石油会社Aに合衆国の供給

    者B,C,及びDが提供するものに匹敵する貨物を供給すると申し出て

    いることを除く。Aは、供給者B,C,及びDとの満足すべき、確立し

    た関係を有するので、Eの申し出を受け入れない。Aが供給者Eの申し

    出を拒否することは、商取引拒否ではない。何故なら、そのことは単に

    不買同盟でない問題を根拠としているから。AにはEとの商取引をすべ

    き確定的な義務はない。

   (I)合衆国の建設会社Aは、排斥国Yに複合事務所施設(office complex)を

       建築する契約を結ぶ。Aはその事業に同等の資格を有する電気ケーブル

       の供給者である合衆国の会社、B及びCから入札を受けている。AはB

       がYのブラックリストに載っていること、またCはそうでないことを知

       っている。AはCの入札を受け入れる。その理由の一つにはCがその他

       可能性のある供給者と同程度の資格を有すること、またその理由の一つ

       にはCがブラックリストに載っていないことがある。

    Aがブラックリストに載っている供給者Bの代わりに供給者Cを選抜す

    ることを決定したのは、商取引拒否である。何故なら、不買同盟がAの

    決定理由の一つだったから。

   (訳者注:complexは(オフィス、店舗、ホテルなどからなる)複合施設)

   (I@)合衆国の元請け建設業者Aは、排斥国Yで高速道路建設を続けている。

    Aは入札案内を合衆国の道路建設設備製造業者に配布する。入札案内に

    掲載されている条件の一つは、Aが迅速なサービスを得られるように、

    供給者は予備部品の供給とYにおけるサービス施設の保持を要求される

    ことである。Aはこの条件を不買同盟に無関係の全く商業上の理由のた

    めに含めている。この条件のために、しかしながら、Yのブラックリス

    トに載っている供給者は、その部品及びサービス要件をいつも満たせな

    かったので入札しない。

    Aの措置は商取引拒否ではない。何故なら、その契約上の条件は全く正

    当な営業上の理由により含められ、かつ不買同盟を根拠としないものだ

    ったから。

   (IA)合衆国の石油会社であるA社は、排斥国Yへ輸出するために合衆国の

    供給者から掘削機の先金を購入する。その購入指示書において、Aは、

    供給者にY国のAの施設へ配送することを要求し、かつ、配送が完了す

    るまで当該貨物の所有権が渡らないとする条件を付した条項を含める。

       このような取決めとする慣例に従い、供給者は所有権が渡るまで、火災、

    盗難、海難、及び通関不能を含む全ての損失の危険性を負担する。

    このような取決め上の主張は商取引拒否にならない。何故なら、この要

    求はブラックリストに載っていようと、なかろうと全ての供給者に課さ

    れるから。(少なくとも本章の§760.4 ”くぐり抜け”を参照のこと)

   (IB)合衆国の建設設計・施工会社であるAは、排斥国Yにおける大規模工

    業施設建設関連で色々な役務を遂行するために同国の政府機関と契約し

    ている。この契約書に従い、Aは有望な供給者の取引先を綿密に検討し、

    希望入札者一覧表を編集し、受取った入札価格を解析し、そして依頼人

    に勧告する。依頼人は独自に選抜し、不買同盟を理由に供給者Cに契約

    を授与する。Aの提供する役務の全ては、Yのブラックリスト又はその

    他の不買同盟問題に係わらず遂行され、そしてそれらはAが排斥国及び

    被排斥国の両方の依頼人に提供する役務と同じ種類のものである。

    Aの措置は商取引拒否にならない。何故なら、事前の役務提供において、

    Aはその他入札者を排除しておらず、かつAは係る役務をその依頼人に

    いつも通り習慣的に提供しているから。

   (IC)(IB)と同じ。但し、有望な供給者の一覧表を編集する際、Aはその

    依頼人がそれら供給者はブラックリストに載っていることを理由に選抜

    を拒絶すると分かっている供給者を削除していることを除く。Aはブラ

    ックリストに載っている供給者を含めても、それら供給者が選抜される

    機会は高まらず、又その依頼人にAが雇われている任務である、有益な

    役務提供にならないことを知っている。

    Aの措置、結局のところ所謂”ホワイトリスト”の供給になる、は商取

    引拒否になる。何故なら、Aの提供する事前役務は不買同盟問題に関係

    なく供給されているのではないから。

   (ID)合衆国の建設業者であるAは、その排斥国の依頼人にB,C,D,及

    びEからなる、差し支えのない有望な供給者一覧表を提供する。依頼人

    は独自に選抜し、不買同盟を理由に供給者Cに契約を授与し、そしてそ

    れからAにその選抜者Cへ助言を与え、Cとの契約を取り決めて、船積

    みの手配をし、到着次第貨物の検査をするよう要請する。Aは依頼人が

    不買同盟を理由にCを選抜したことを知っている。

    その依頼人の指示に従ったAの措置は、商取引拒否である。何故なら、

    Aの事後措置はその依頼人の不買同盟を根拠とする決定を遂行するから。

    (注:Aの措置が一方的な選抜例外の範囲内に入るかどうかは、本章

       §760.3(d)に述べる要因による。)

   (IE)(ID)と同じ。但し、Aは完成後引渡し契約に基づきその事業を進め

    ており、完成まで所有権を保持していることを除く。依頼人はAにCと

    のみ契約するよう指示する。

    Cとの契約をする際のAの措置は、商取引拒否になる。何故なら、それ

    はブラックリストに載せられた者を不買同盟を理由に排除する措置であ

    るから。(注:Aの措置が一方的な選抜例外の範囲内に入るかどうかは、

           本章§760.3(d)に述べる要因による。) 

   (IF)合衆国の工作機械輸出業者であるAは、排斥国Yから立て型ボール盤

    の注文を受けている。Yの調達局職員からの添え状には合衆国の製造業

    者の中からAが選抜された理由の一つにはAがYのブラックリストに載

    っていないことであると述べてある。

    この注文に応ずる際のAの措置は、商取引拒否ではない。何故なら、A

    は誰も取引から排除していないから。

   (IG)排斥国Yでダムの建設の契約期間中の合衆国の土木工事会社Aは、不

    買同盟に関係なく、能力及びこれまでの実績情報を含めた潜在的大規模

    設備供給者一覧表を編集している。Aはそれからその一覧表の上位3社、

    B,C,及びDが最も適任であるために、そこからの入札を求めている。

    それらはたまたまその内の1社もブラックリストに載っていない。Aは

    一覧表上の次の3社、E,F,又はGからの入札を求めていない。そし   

    て、その内の1社はYのブラックリストに載っている。

    B,C,及びDのみから入札を求めるAの決定は、如何なる者との商取

    引を拒否しているものではない。何故なら、求められた入札者は不買同

    盟を理由に選抜されていないから。

   (IH)合衆国の銀行Aは、合衆国の受益者(受取り人)Bに支払われるべき信

    用状を受けている。その信用状はBにBがブラックリストに載っていな

    いことを証明するよう要求している。Bは信用状の全ての条件を満たし

    ているが、しかし、ブラックリストの状況に関する証明を拒絶している。

    AはBがブラックリストの状況に関する証明を拒絶している唯そのため

    に、信用状におけるBへの支払いを拒絶する。

    Aは不買要件若しくは要請に従い、もう一つの者(相手方)との商取引

    を拒絶している。

    (訳者注:ここで、もう一つの者(another person)とは信用状の発行者

         を言うものと考え以下、相手方と訳す。)

   (II)合衆国の銀行Aは、合衆国の受益者Bに支払われるべき信用状を受け

    ている。その信用状はBに貨物を運搬する船舶はブラックリストに載っ

    ていないと言う船会社からの証明書を提供するよう要求する。BはAに

    支払いを要求し、信用状のその他全ての条件を満たすが、当該船舶のブ

    ラックリスト関連状況についての船会社からの証明書の提供を拒絶し、

    若しくはそれをすることができない。AはBが証明書を提供できないか、

    或いはその積もりがないと言う唯それだけの理由で信用状に関するBへ

    の支払いを拒絶する。

    AはBが前述の証明書を取得するよう主張することにより、不買同盟要

    件又は要請に従い、相手方に商取引を拒否するよう要求していることに

    なっている。(A又はBのどちらでも、どのような方法であれ船舶資格

    証明書に置き換える修正を信用状に加えるよう要請して良い。以下の例

    (II@)を参照。)

   (II@)合衆国の銀行Aは、排斥国Yにおける銀行から合衆国の受益者Bに

    支払われるべき信用状を受けている。その信用状はBに貨物を運搬する

    船舶はY国の港に入港する資格があると言う船会社からの証明書を提供

    するよう要求する。BはAに支払いを要求し、そして信用状のその他全

    ての条件を満たしている。AはBが証明書を提供できないか、或いはそ

    の積もりがないと言う唯それだけの理由でBへの支払いを拒絶する。

    船会社により提供される船舶資格証明書を要請することは禁止条件では

    ないから、Aは不買同盟要件又は要請に従い相手方との商取引を、拒否

    し、或いは拒否するよう相手方に要求していないのである。(本章の補

    足No.1, (1)(B),”船積み証明書”を参照。)

   (IIA)合衆国の銀行Aは、合衆国の受益者Bに支払われるべき信用状を認

    証する。その信用状はBが自らブラックリストに載っていないことを証

    明すべき要件を含んでいる。Bは銀行Aのコルレス銀行である合衆国の

    銀行Cに信用状を提出する。Bは銀行Cにブラックリスト状況証明書を

    提出しないが、しかし、業界の慣習に従い銀行CはBに支払いをし、そ

    れから払い戻しを受けるために信用状及び証拠資料を銀行Aに提出する。

    銀行AはBのブラックリスト証明書が証拠資料の中に含まれていないた

    めに、銀行Cへの払い戻しを拒絶する。

    AはCがBから証明書を取得するよう主張することにより不買同盟要件

    又は要請に従い、相手方に或る者との商取引を拒否するよう要求してい

    ることになっている。

   (IIB)合衆国の銀行Aは、合衆国の受益者Bに支払われるべき信用状を受

    けている。その信用状はB自身がブラックリストに載っていないことを

    証明するようBに要求している。Bは支払いを受けるためAに証拠資料

    を提出する時、Bは前述の証明書を提供しない。AはBに証明書が提出

    されていないことを通知している。

       AはBに証明書が抜けていると通知することにより不買同盟要件に従い、

    相手方との商取引を拒否しているのではない。しかしながら、もし、B

    が前述の証明書を提供しないと述べるならば、Aはその信用状に関する

    支払いを拒否してはならない。

   (IIC)合衆国の銀行Aは、クレジットカード発行銀行から認証、譲渡又は

    支払いのために、合衆国の受益者Bに支払われるべき信用状を受けてい

    る。その信用状はB自身がブラックリストに載っていないことを証明す

    るようBに要求している。AはBにこの条件を含む信用状を取り扱うこ

    とはAの方針に反すること、及びこの条件を削除する修正が行われない

    限りAはその信用状を履行しないことを通知する。

    Aは不買同盟要件に従い相手方と商取引することを拒否しているのでは

    ない。何故なら、AはBが前述の証明書を提供する能力若しくは意志を

    有するかどうかに係わらず、その条件を含む信用状を履行しない方針を

    示しているのだから。

     [商取引拒否の同意]

   (@)合衆国の建設業者Aは、小学校を建築するために排斥国Yの機関に雇わ

    れている。提議された契約書にはAは”X国に対するYの不買同盟のた

    めにY国との業務関係を制限された者が生産し、或いは供給する如何な

    る貨物若しくは役務もその事業に使用してはならない”とする一箇条が

    含まれている。

    前述の契約を結ぶAの措置は、商取引拒否に同意することになる。何故

    なら、それはブラックリストに載っている者を取引から排除することに

    同意しているから。しかしながら、Aは交渉してこの箇条が本章で禁止

    される条項を含まないように取り決めて良い。

   (A)合衆国の市販用冷蔵庫及び冷凍庫の製造業者であるAは、排斥国Yから

    入札案内を受けている。それには入札者はYのブラックリストに載って

    いる会社との取引をしないことに同意しなければならないとされている。

       Aはどの会社がブラックリストに載っているのか知らない。けれども、

    Aは不買同盟条件に反対せず、入札をした。Aの入札では一定の会社と

    取引しないことに関する確約をしていない。

    AがYの入札における不買要請に反対せずに入札をした時点で、Aはブ

    ラックリストに載っている者との商取引拒否に同意している。何故なら、

    Yの入札条件はAが商取引を拒否することに同意するよう要求している

    から。

   (B)合衆国の建設業者Aは、排斥国Yにおける事業に関連する建設設計・施

    工業務を遂行する契約の申し込みを受けている。その契約書には、契約

    紛争が生じた場合にYの法律が適用されるとする一箇条が含まれている。

    Aは契約を結んで良い。契約紛争の解決は排斥国Yの法律によるとする

    同意は、商取引の拒否に同意することではない。

   (C)(B)と同じ。但し、その契約書にはA及びその従業員は排斥国Yの法律

    に従うとする一箇条が含まれていることを除く。AはYが幾つかの不買

    同盟法を持っていることを知っている。

    前述の同意、それ自体は商取引の拒否に同意することではない。しかし

    ながら、もし、Aがその後Yの法律を理由として誰かとの商取引を拒否

    するならば、Aの措置は商取引の拒否となる。

   (D)(C)と同じ。但し、その契約書にはA及びその従業員は”不買同盟法を

    含む”排斥国Yの法律に従うとする一箇条が含まれていることを除く。

    Aが無条件に現地の不買同盟法に従うことに同意しているのは、商取引

    拒否の同意になる。

   (E)(D)と同じ。但し、”Yの法律が合衆国の法律に矛盾しない限り”とす

    る条項、若しくはその効果を表す言葉をAが挿入したことを除く。 

    前述の同意は商取引拒否の同意ではない。

   (F)合衆国の元請け建設業者Aは、排斥国Yにパイプラインを建設するため

    雇われている。提議された契約書の条項に、設備、食料・物資及び役務

    を購入する際Aは主催国Yに所在する会社に優先権を与えなければなら

    ないと規定されている。

    Aはこの契約条項に同意して良い。”現地調達”契約条項に同意するこ

    とは商取引拒否の同意ではない。何故なら、Aの同意は不買同盟を理由

    になされていないから。

   (G)排斥国Yの顧客向け貨物の小売り販売を計画している合衆国の輸出業者

    Aは、合衆国の器具製造業者Bから卸売りで貨物を購入する契約を結ん

    でいる。AのBとの契約書には、その器具の製造においてブラックリス

    トに載せられた会社の部分品又は役務をBが使用してはならないと規定

    する条項を含んでいる。

    Aの契約書は商取引拒否になる。何故なら、それは相手方Bに不買同盟

    を理由としてその他の者との商取引を拒否するよう要求しているから。

    Bは前述の契約書に同意してはならない。何故なら、それは不買同盟を

    理由としてその他の者との商取引拒否に同意することになるから。

   (H)(G)と同じ。但し、Y向けに輸出される貨物の製造においてブラックリ

    ストに載せられた会社の部分品又は役務をBは使用しないと言う暗黙の

    了解にAとBは達していることを除く。排斥国向けでない輸出用であっ

    てAに販売される器具の製造において、Bはブラックリストに載ってい

    る会社により製造された部分品を使用している。

    AとBの両方の措置は商取引拒否の同意になる。その同意は彼等の行動

    の様式により暗に示されている。

   (I)排斥国Yは貨物を合衆国の会社Bに注文している。YはBのために外国

    の銀行Cに信用状を開設する。信用状には対X国不買同盟ブラックリス

    トにある銀行にその信用状を譲渡することを禁止する旨明記してある。

    Cのコルレス銀行である合衆国の銀行Aは、Bに信用状の受取りを通知

    する。Bは信用状の支払いをうけるために、不買条件の修正又はその他

    それに反対をせずに銀行Aに証拠書類を提出する。

    支払いを受けるために信用状を提出すれば、Bはその約定及び条件の全

    てを受け入れたことになるので、Bはブラックリストに載っている銀行

    との商取引拒否に同意している。

(b)差別的な措置

   『差別的な措置の禁止事項』

 (1)米国人は次のことをしてはならない。

   (@)米国人である個人について、人種、宗教、性別、又は血統・出自を根拠

    として雇用を拒否し若しくはその他差別をすること

   (A)米国人である法人又はその他団体について、その法人又は団体の所有者、

    役員、理事、又は従業員の人種、宗教、性別、又は血統・出自を根拠と

    して差別をすること

   (B)本節の(b)(1)(@)及び(A)項に記述されたいずれかの措置を取ることに

    知っていながら同意すること、   または

   (C)本節の(b)(1)(@)及び(A)項に記述されたいずれかの措置を取ることを

    その他の者に要求し、若しくはそれをその他の者に要求することを知っ

    ていながら同意すること

 (2)本禁止事項は、差別的な措置が米国人によって取られた次の場合に適用す

   るものとする。その場合とはその者の独断による場合、又は排斥国への同

   意、そこからの要請、若しくはその国の要求に応じて取られる場合である。

    本禁止事項は、その他事項と同様に、合衆国の州際通商又は外国貿易にお

     ける米国人の行為に係わるものに限り、かつ又係る行為が認可・承認され

     ていない外国の不買同盟に従い、推進し、或いは支持する意図を持って企

     てられた場合に限り適用される。

 (3)本節は合衆国の公民権関連法律に取って代わり或いはそれを制限するもの

   ではない。

     《差別的な措置の例》

   下記の例は、差別的な措置を取ることが禁止されている個々の場合を決定

   する際の指針を与えんとするためのものである。これらの例は説明のため

   のものであって全ての場合を網羅しているものではない。

   (@)合衆国の建設会社Aは、排斥国Yに複合事務所施設を建設する契約を受

    けている。Xに対するYの不買同盟のために特定の宗教の従業員はYで

    働くことを許可されないと信じているAは、かの宗教の米国人を当該事

    業に関する雇用対象から排除している。

    Yにおける事業で働く資格のある特定の宗教の米国人についてAが検討

    を拒否することは、不買同盟を根拠とする禁止された宗教による米国人

    への差別的な措置になる。

   (A)(@)と同じ。但し、契約書の一箇条で”X国出身の者は誰も本事業で働

    けないことになっている”と規定してあることを除く。

    Aの合意は、取り分け血統・出自による不買同盟を根拠とする禁止され

    た米国人への差別となる。

   (B)(@)と同じ。但し、契約書の一箇条で”X国の市民、居住者、又は同国

    の国民は誰も本事業で働けないことになっている”と規定してあること

    を除く。

    Aの合意は、人種、宗教、性別、又は血統・出自による米国人への差別

    の不買同盟を根拠とする同意にならない。何故なら、その箇条は市民権、

       居住権、及び国籍に限定して排除を要求しているから。

   (C)合衆国の建設会社Aは、排斥国Yに学校を建設する契約を結んでいる。

    Yの代理人は口頭でAに、X出身の者は本事業で働けないことになって

    いると告げている。

    Aはこれに従ってはならない。何故なら、そうすれば血統・出自による

    差別になるから。AがYの口頭による要求を知っていても相違を生じな

    い。AがYの差別要求をどのような方法で知っても変わりはない。

   (D)排斥国YはYにおける建設事業に関する入札案内を差し出している。そ

    の中で落札者の社員には面接を行い、また特定の宗教上の信条を持つ者

    がその事業で働くことを許可しないよう要求している。Yの要求は、そ

       の市民の大多数がかの特定の信条を持つX国、に対するYの不買同盟を

    根拠としている。

    米国人が入札文書における本条項に同意することは、不買同盟を根拠と

    して特定の宗教の米国人を差別する禁止された同意になる。

   (E)(D)と同じ。但し、入札案内には”女性が本事業で働くことを認めない”

    と明記してあることを除く。

    米国人が入札案内の本条項に同意することは、不買同盟を根拠として差

    別をする禁止された同意にならない。何故なら、女性の雇用を制限する

    ことは不買同盟を根拠とするものでないから。しかしながら、前述の同

    意は合衆国の公民権関連法律に違反することになる。

   (F)Aは合衆国の債券引き受け会社(investment banking firm)である。排斥

    国Y発行の債券引き受けに参加する条件として、Aは特定の信条の者が

    所有する投資銀行を引き受けに参加させないよう要求されている。Yの

    要求は、その市民の大多数がかの特定の信条を持つX国、に対するYの

    不買同盟を根拠としている。

       Aが前述の条項に同意することは、不買同盟を根拠として宗教により米

    国人を差別する禁止された同意になる。さらに、もし、Aがその他の者

    にこのような条件に同意するよう要求するなら、Aは相手方に前述の差

    別をするよう要求していることになる。

   (G)合衆国の会社Aは排斥国Yから、Yに輸入されるAの製品の包装に六つ

    星(six-pointed star)を使用しないことを保証するよう頼まれている。

    その要求はX国に対するYの不買同盟のYによる実施活動の一部である。

    Aはそれを保証してはならない。六つ星は宗教上の象徴であり、係る象

    徴を使用しないとAが保証することは、Aがかの宗教の者により製造さ

    れ、若しくはその者が取り扱う製品を出荷しないと述べたことになる。

   (H)(G)と同じ。但し、Aは被排斥国Xの象徴がYに輸入されるXの製品の

    包装に表れないことを保証するように頼まれていることを除く。

    係る保証は如何なる者の宗教について何も示唆するものでなく、だから

    本禁止事項に入らない。 





[訳者補足]

1.§760.2(a)(2),(6)におけるone/another/the other personの意味

  ここで対象とする複数のpersonsからone(或る者)、another(もう一つの者)、

  そしてthe other(残りの者)の順に取り出したもので、前の2者は単数、後

  者は単数又は複数である。いずれのpersonについても不買同盟を根拠とする

  選択・選抜が行われれば商取引拒否になる。

2.§760.2(a)(6)のa United States general managerについて

  これはa United States person(”米国人”)に対応するものと考える。

  そして、このpersonに代わるgeneral managerは《工場・会社などの日々の

  営業を監督する》総括管理者だから、ここでは「事業所総括管理者」と訳す

  ことにする。なお、この事業所には国内企業の工場、営業所、弁護士事務所

  等々を含むものと思う。

                        (次項へ続く)