制限的取引慣行又はボイコット

                         (§760.4)

§760.4 「くぐり抜け」

(a)如何なる米国人も、本章の条項をくぐり抜ける意図を持って、単独に或いは

  その他の者を通じて取引に従事し若しくはその他の措置をしてはならない。

  さらに、如何なる米国人も、本章の条項に違反し若しくはこれをくぐり抜け

  るために、別の米国人を援助してはならない。

(b)§760.3(a)から(i)に述べた例外は、本章により別途禁止され、また前述の例

  外の意図する範囲外の 行為若しくは同意(応答様式を含め、振舞いの有り様

  から明白に、或いは暗黙になされるもの)を許可するものではない。しかし

  ながら、本章に述べる例外の適用及び意図の範囲内の行為には、前述の例外

  を何度利用してもくぐり抜けにならない。

(c)或る者が排斥国と又はその国内で商取引関係を有するために、不買同盟を理

  由にブラックリストに載せられ、或いはその他制限をされている故に、その

  者に商業上の不利益を与え、若しくはその者に特別の負担を課さんとする策

  略、工夫、又は計画を使用することは、本章ではくぐり抜けと見なされる。

(d)どの例外に基づいても許可されない場合に、排斥国の輸入法を理由とし、相

  手方に財務リスクを明白に課す損失の危険(訳者補足を参照)条項を使用す

  ることはくぐり抜けになる恐れがある。もし、それらが1978年1月18

   日以降に導入されたものなら、それらはくぐり抜けになると見なされる。但

   し、この推定は前述の条項が排斥国と非排斥国の間で相違することなく慣例

   的に使用されており、かつその使用が不買同盟によらない正当な理由を有す

   ることを示すことにより反証できる。他方では、1978年1月21日以後

   米国人による係る条項の使用は、もしその条項が1978年1月21日より

   前からその者により慣習的に使用されていたならば、くぐり抜けにならない

   と見なされる。

(e)ダミー会社の使用、又は禁止された行為を隠すためのその他工夫もまたくぐ

  り抜けと見なされることになる。同様に、禁止された不買同盟要件に従うた

  めに、特定の排斥国からの注文を合衆国の親会社から外国にある子会社にそ

  らすことは、本章ではくぐり抜けとする。しかしながら、商取引の人的構成

   又は方法の変更は、その変更が合法的な業務検討に基づき、かつ ただ本章

   の禁止事項の適用を避けるために取られたものでない限り、くぐり抜けにな

   らない。取り決めまたは取引の事実及び状況は、見掛けと現実が一致してい

   るかどうかを見るために詳しく調べられることになっている。

     《例》

   下記の例は、本節が適用される場合を決定する際の個人(法人を含む)向

   け指針を与えんとするためのものである。これらの例は説明のためのもの

   であって全ての場合を網羅しているものではない。

   (@)合衆国の保険会社Aは、排斥国YからAが被排斥国Xで商取引をしてい

    るかどうかを尋ねる文書を受取っている。係る情報の提供は禁止されて

    いるので、Aは回答することを断った、その結果としてYのブラックリ

    ストに載せられた。翌年、Aの年次報告には、Aがそこで商取引をして

    いる全ての国の一覧表を含む、Aの世界的な運営管理に関する新情報を

    掲載した。Aはその後年次報告の写しを、そしてそれはかって一度も係

    る情報を載せたことのないもので、それをY国政府の職員宛に郵送して

    いる。

    こんな風に年次報告を変える、不買同盟に関連しない何らかの業務上の

    正当性がなければ、Aの行動は本章のくぐり抜けになる。

   (A)排斥国Yに居住する合衆国の建設企業Aは、合衆国の会社Bに材木を注

     文をしている。Aは幾分かは、合衆国の材木生産者CがYによりブラッ

    クリストに載せられており、それ故Cの製品は輸入できないと言う理由

    で、一方的にBを選抜している。それをBに注文するに際し、Aは、

    ”Aが実際にBの製品を受取っていることを確信できる”ように、Bが

    その材木の上にBの社名又はロゴを捺印するよう要請している。Bは普

    通はその材木にそんな捺印をしていない。係る要請をするAの目的は、

    本章の一方的選抜例外の範囲に適合させようとしていることは明らかで

    ある。

    Aの行動を正当化する新たな事実がなければ、Aの行動は本章のくぐり

    抜けになる。

   (B)合衆国の会社Aは何年もの間排斥国Yにミシンを販売して来た。Aは新

    規の顧客から原産地の否定的な証明書を提出するよう要請を受けている。

    Aは係る証明を提供することが禁止されていることに気付いている。そ

    れ故、Aは今後の全ての出荷品は、ミシンを発送する前に必要な否定的

    な証明書を貼り付ける第三国にある外国の企業を経由してYに達するよ

    う手配する。

    Aの行動は本章のくぐり抜けになる。何故なら、それはAに代わって遂

    行された禁止された行為を隠すための工夫だから。

   (C)合衆国の会社Aは何年もの間計算器をC国の卸売り業者Bに販売してお

    り、日常的に原産地の肯定的な証明書を提供している。Aは原産地の否

    定的な証明書を要求するY国からの注文を受けている。Aは今後全てC

    国の卸売り業者Bに販売するよう手配する。Aは、Bが参加し、そうで

    なければAが直接することになるY向け販売をBがすることが分かって

    いる。Bは不可避の否定的な証明書を作成することになる。Aが引き続

    き引き受ける保証はYにおける購入者に及んでいる。

    Aの行動はくぐり抜けになる。何故なら、注文をBにそらすことは、A

    に代わって遂行された禁止された行為を隠すための工夫だから。

   (D)合衆国の会社Aは、排斥国Yのあらゆる医療用物資の必要に応えるため

    にY国との長期契約を結ぶべく交渉をしている。YはAに係る契約が締

    結される前に、AはYの不買同盟アンケートに答えなければならないと

    知らせている。Aはそのアンケートに答えることは禁止されていること

    を知っている。それでAはYにいる現地代理人が必要な情報を提供する

    よう手配している。

    Aの行動は本章のくぐり抜けになる。何故なら、それはAに代わって遂

    行された禁止された行為を隠すための工夫だから。

   (E)以前に排斥国Yと取引したことのない合衆国の建設業者Aは、Yから建

    設契約を受けている。建設業者がその事業期間中、現場施設を設立する

    のが建設業界の慣習なので、Aは事務所のようなものを設立している。

    そして、それは善意の居住要件を満たすものである。その後、Yにある

    Aの事務所は現地の法律遵守の例外に基づき許可された幾つかの措置を

    取っている。

    Aの行動はくぐり抜けにならない。何故なら、YにおけるAの施設は合

    法的な業務理由により設立されたものだから。

   (F)合衆国の会社Bの管理する外国にある子会社Aは、排斥国でないMに事

    務所を構えている。A及びBは共に、それぞれの販売領域で販売用の工

    作機械を組立てている。Bの販売領域には排斥国Yを含んでいる。本章

    の要件を査定した後、Bは最早Yで販売用の機械を組立てることができ

       ないと決定した。代わりに、Yの市場に供給するために、MにあるAの

       施設を拡張することをAは決定した。

    A及びBの行動はくぐり抜けにならない。何故なら、そこには各々の行

    動に対する合法的な業務理由があるから。本章の及ぶ範囲を超え結果的

    にその販売が別途本章の規制を受けることになったとしてもそれは関係

    ない。

   (G)合衆国の製造業者Aは、Aが合衆国にあるAの工場から調達することに

    なる排斥国Yからの購入注文書を時々受取っている。AはAが本章に基

    づき提供を禁止されている証明書の要求を含むYからの注文を将に受け

    ようとしていることを知っている。証明書の作成を可能にするために、

    Aはその購入注文書をAの外国にある子会社にそらしている。

    Aによる購入注文書の転用は本章のくぐり抜けになる。何故なら、それ

    はAに代わって遂行された禁止された行為を隠すための工夫だから。

   (H)合衆国の会社Aは、排斥国Y向けに出荷する掘削装置の組立てに従事し

    ている。ブラックリストに載せられた企業により供給される資材を確実

    にYに持ち込むには潜在的困難があるので、AはAに供給される全ての

    資材について、ブラックリストに載せられた企業は15%の値引きをす

      るよう強要している。その結果、ブラックリストに載せられた企業はど

       こもAと進んで取引しようとしない。

    ブラックリストに載せられた企業により供給される資材についてのAに

    よる値引きの強要は、本章のくぐり抜けになる。何故なら、それはYの

    不買同盟を理由として、ブラックリストに載せられた企業に特別の負担

    を課さんとする工夫又は計画だから。

   (I)(H)と同じ。但し、1978年1月18日の後直に、合衆国の会社Aは

    その供給者が次のことを規定した契約書に署名するよう強要しているこ

    とを除く。その契約とは、所有権が供給者からAに渡った後であっても、

    もし供給者が提供した物品が不買同盟のためにYへの持ち込みを拒絶さ

    れるなら、その供給者は損失の危険を引き受け、そしてAに賠償すると

       言うものである。

    Aの行動は本章のくぐり抜けになる。何故なら、それはYの不買同盟を

    理由として、ブラックリストに載せられた者に特別の負担を課さんとす

    る工夫又は計画だから。

   (I@)(I)と同じ。但し、Aが1978年1月18日以前はその供給者に係

    る協定を慣習的に強要していたことを除く。

    Aの行動はくぐり抜けにならないと見なされる。何故なら、Aはこの契

    約上の協定を1978年1月18日以前には慣習的に行使していたから。

   (IA)合衆国の会社Aは排斥国Yに自動車の組立品部品(sub-assembly)ユニ

    ットを供給する契約をしている。1978年1月18日の後直に、Aは

    その供給者が次のことを規定した契約書に署名するよう強要している。

    その契約とは、所有権がAに渡った後であっても、もし供給者が提供し

    た物品が如何なる理由であれYへの持ち込みを拒絶されるなら、その供

    給者は損失の危険を引き受け、そしてAに賠償すると言うものである。

    この協定についてのAの強要はくぐり抜けになると見なされる。何故な

    ら、それはYの不買同盟を理由として、ブラックリストに載せられた企

    業に特別の負担を課さんとする工夫だから。この推定は係る協定の行使

    が、関係する排斥国と非排斥国の性格に関係なく慣例となっており、か

    つそこにその行使について正当な不買同盟によらない理由があることを

    示す充分な証拠により反証できる。

   (IB)(IA)と同じ。但し、全ての供給者は国内配送をするようAが要求し

    ていることを除く。

    Aの行動はくぐり抜けにならない。何故なら、物品を国内配送するよう

    要求することは普通の商習慣だから。

   (IC)(IA)と同じ。但し、Yにおける配送が完了するまで、所有権が供給

    者にあるようAが要求していることを除く。

    Aの行動はくぐり抜けにならない。何故なら、配送が完了するまで所有

    権が供給者にあるよう要求することは普通の商習慣だから。本例は例

    (IA)と区別される。何故なら、例(IA)では所有権がAに渡った後で

    あっても、損失の危険はAに残ることを要求するようもくろまれた普通

    でない協定を強要したのだから。

   (ID)合衆国の銀行Aは、合衆国の会社Bより排斥国Yとの取引への融資に

    関する話しを受けている。支払いはその合衆国の住所でBに支払われる

    べき信用状により成される。その信用状には、もし受益者が米国人なら

    Aによる信用状の履行を禁ずる制限的な不買同盟条件を含むことになる

    ものとAは理解している。AはBに不買同盟条件を通知し、また受益者

    を非排斥国MにあるペーパーカンパニーCに変更すべきとBに提案する。

    受益者はそれに従って変更される。

    A及びB両方の行動は本章のくぐり抜けになる。何故なら、その取決め

    は禁止された行為を隠すための工夫だから。

   (IE)(ID)と同じ。但し、信用状の受益者である合衆国の会社Bは、Aが

    その信用状を履行できるように受益者をBの外国にある子会社に変更す

    るよう手配していることを除く。Aはこのことを承知している。

    AはBの行動を知っているにも係らず、その信用状を履行することは本

    章のくぐり抜けになる。何故なら、Aの行動は両当事者による禁止され

    た行為を隠すための工夫の一部だから。

   (IF)合衆国に店舗を構える合衆国の銀行Aは、外国の会社Bより排斥国Y

    との取引への融資に関する話しを受けている。Bは合衆国の会社の管理

    する子会社である。外国にあるその住所でBに支払われるべき信用状を

    元に融資されることになっているその取引では、Bの取締役の中に一人

    も或る特定の宗教的信条者がいないことを保証するよう要求されている。

    Bは法律上その証明書を提供できないので、BがYにあるA銀行の支店

    を通してYに必要な情報を提供するようAに頼んでいる。前述の情報は

    完全に信用状取引の埒外で提供される。

    Aの行動は本章のくぐり抜けになる。何故なら、それはBによる本章の

    違反を援助することになるから。

   (IG)合衆国の銀行Aは、外国の会社Bが排斥国Yとの長期契約に基づき仕

    事ができるよう、Bに支払われるべき信用状を履行するようBから頼ま

    れている。信用状の条件に基づき、Bはその供給者の誰一人もブラック

    リストに載せられていないことを保証するよう要求されている。この条

    件では信用状の履行ができないことをAは知っているので、信用状から

    この要件を削除し、代わりにYに直接証明書を提供する交渉をするよう

    AはBに告げている。

    否定的な証明を直接YにするようAがBに提案することは、本章のくぐ

    り抜けになる。何故なら、Aは相手方を通して、Aの役割について禁止

    された行為を隠すための措置をAが取っているから。

                                以上





[訳者補足] 

1.Risk of Lossについて

  これは下記の意味を含む法律用語であって、ここでは「損失の危険」と訳し

  た。

  The Upstart Small Business Legal Guide, Second Edition by Robert 

   Friedman ; Dearborn Financial Publishing, Incより抜粋

  Risk of Loss

  Unless otherwise provided for in the sales contract, risk of loss is 

  determined under the following standards: 

  Goods to be delivered to carrier. If the seller is required to deliver 

  the goods to a carrier, the risk of loss shifts to the buyer when the 

  seller duly delivers the goods to the carrier. 

  ・・・・・

  損失の危険

  販売契約において別途規定がない限り、損失の危険は下記の標準に基づき決定

  される。

  運搬業者に引き渡された物品。もし販売者が運搬業者に物品を引き渡すよう要

  求されているなら、販売者が運搬業者に物品を適切に引き渡した時損失の危険

  は買い手へ移る。

  ・・・・・

2.本節の例と定義 Risk of Loss の対応

  例(I) 〜 (IA)

   下記の定義全文中のRepudiation(拒絶)に対応する。所有権が買い手に渡

   る前であっても、買い手は売り手の損失を補うよう定義されている。

   なお、(IA)の場合は所有権が買い手に渡った後であっても、買い手が受け

   た損失を売り手に補わせようとしている。これは上記定義と異なる、通常の

   商慣習ではない。

3.Risk of Loss の定義全文

 Risk of Loss

 Unless otherwise provided for in the sales contract, risk of loss is 

 determined under the following standards: 

・Goods to be delivered to carrier. If the seller is required to deliver

 the goods to a carrier, the risk of loss shifts to the buyer when the 

 seller duly delivers the goods to the carrier.

・FOB place of shipment. Risk of loss shifts to the buyer when the goods 

 are placed in the hands of the shipper.

・FOB destination. Risk of loss shifts to the buyer at the time and 

 place of delivery or the time and place where tender of delivery is

 made to the buyer. 

・Seller to deliver. If the seller must deliver the goods to the 

 destination,the risk of loss shifts to the buyer when the delivery is 

  tendered to it so as to enable it to take possession. 

・Sale or return. If the goods are sold to the buyer for resale rather 

  than for use, with the understanding that they may be returned, the 

  risk of loss is on the buyer until they're returned.

・Sale on approval. If the goods are sold to a buyer primarily for its 

  own use rather than for resale and the agreement calls for a sale on 

  approval, the risk of loss shifts to the buyer when the buyer accepts 

  the goods. Failure to notify the seller within a reasonable amount of 

  time of rejection of the goods is deemed to be acceptance. 

・Goods fail to conform. When delivered goods fail to conform to the 

 requirements of the agreement, the risk of loss remains on the seller 

  until the nonconformity is cured or the nonconforming goods are 

  accepted by the buyer. 

・Buyer revokes acceptance. If the buyer initially accepts the goods but 

 subsequently (and justifiably) revokes their acceptance, the buyer may 

  treat the risk of loss as having rested on the seller to the extent of 

  any deficiency in its insurance coverage. 

・Repudiation. If the buyer repudiates the agreement before title to the 

  goods passes to it, the seller may treat the risk of loss as having 

  rested on the buyer for a commercially reasonable time. However, the 

  buyer's liability is limited to the extent of any deficiency in the 

  seller's insurance coverage.

・Nonconforming goods. When the goods tendered fail to conform to the 

  agreement to an extent that the buyer would be entitled to reject the 

  tender of delivery, the risk of loss remains on the seller until it 

  has cured the defect or the buyer has accepted the goods.





 Excused Performance 

 When goods are destroyed before the risk of loss shifts from the 

  seller to the buyer, the agreement will be void if they were identified 

  to the agreement before their destruction and the destruction was not 

  the fault of either party. f goods that were identified in the agreement 

  when the agreement was made are so deteriorated that they no longer 

  conform to the requirements of the agreement or have been partially 

  destroyed without the fault of either party, the buyer has the option of 

  treating the contract as void or accepting the goods with allowance for 

  the deterioration or destruction. 



 The seller will be excused from performance if it becomes commercially 

 impracticable as the result of a contingency whose nonoccurrence was a 

  basic assumption on which the agreement was founded.  

 



 Deposits, Prepayments, and Liquidated Damages 

 The seller is entitled to keep the buyer's deposit if the buyer 

  refuses to accept the goods or otherwise breaches the agreement, 

  provided the deposit does not exceed either 20 percent of the buyer's 

  obligation or $500 (whichever is smaller) unless the buyer has received 

  a benefit or the seller has incurred damages.